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Sotos(ソトス)症候群について
ソトス症候群は、
①NSD1遺伝子の機能異常による大頭、過成長、骨年齢促進
②特徴的な顔貌(頭が大きく長頭、大きい手足、前額・下顎の突出、高口蓋、眼瞼裂斜下、眼間開離を含む特徴的な顔貌)
③精神発達障害
を三主徴とする常染色体優性遺伝性の先天性神経疾患です。脳性巨人症(Cereberal gianitism)ともいわれます。
1964 年にアメリカの医師、Sotos らによって報告されました。
彼の名前をとって Sotos(ソトス)症候群と呼ばれています。 ソトス症候群を有する赤ちゃんは毎年約 5000 人に 1 人生まれています。
2002 年に、日本人のグループによって、ソトス症候群の原因が NSD1 遺伝子にあることが分かりました。
ほとんどの場合が遺伝ではなく、お父さんの精子、あるいはお母さんの卵子が作られるときの突然変異が原因です。
ソトス症候群の85~90%は孤発例で,10~15%は家族性ソトス症候群であると報告されています。
ソトス症候群を引き起こすNSD1遺伝子異常は、日本人においては、ほかの人種と比較して違いが多いことが知られています。日本人では、遺伝子の一部分が失われている「欠失」というタイプの遺伝子異常が多いです。
併発する症状は以下の通りです。
1)ほとんどの人にみられる共通する症状
・過成長(出生時から頭囲や体つきが大きい)
出生前から過成長がみられ、身長、体重、頭囲は生下時から+2.0SDを超えることがあります。幼少期では、同年齢の子どもと比較しても身体の大きさが目立ちます。年齢と共に過成長は落ち着く傾向にありますが、最終身長も平均よりは大きくなることが多いです。
・発達の遅れ(その程度は個人差あり)
独歩,発語は遅く,粗大運動や微細運動などに協調運動障害が見られます。乳児期は筋緊張低下のため流涎が見られることがあります。
怒りやすく雑な性格で行動異常も指摘されています。精神発達遅滞(IQ40~境界領域)は80~85%に見られますが,残り約20%は正常でその程度は個人差が大きいとされます。痙攣は30~40%に合併し,頭部MRIでは脳室拡大,くも膜下腔拡大,脳梁欠損あるいは低形成,透明中隔欠損などが見られます。
2)主要な合併症
・心臓合併症(動脈管開存症、心室中隔欠損症)
・腎泌尿器合併症(水腎症、膀胱尿管逆流、尿路感染症、腎形態異常)
・けいれん
・側弯(背骨の曲がり)
・扁平足
3)その他の合併症
・耳の合併症(中耳炎、聴覚障害)
・眼の合併症(屈折異常、斜視)
・歯科的症状(早期萌出、歯肉炎、何本かの永久歯欠損、歯並びの問題)
<重症度分類>
1.小児例(18歳未満)
小児慢性特定疾病における状態の程度に準ずる。
2.成人例
以下の1)~4)のいずれかに該当する者を対象とする。
1)難治性てんかんの場合:主な抗てんかん薬2~3種類以上の単剤あるいは多剤併用で、かつ十分量で、2年以上治療しても、発作が1年以上抑制されず日常生活に支障を来す状態(日本神経学会による定義)。
2)先天性心疾患があり、薬物治療・手術によってもNYHA分類でII度以上に該当する場合。
NYHA分類
I度 |
心疾患はあるが身体活動に制限はない。 |
II度 |
軽度から中等度の身体活動の制限がある。安静時又は軽労作時には無症状。 |
III度 |
高度の身体活動の制限がある。安静時には無症状。 |
IV度 |
心疾患のためいかなる身体活動も制限される。 |
NYHA: New York Heart Association
NYHA分類については、以下の指標を参考に判断することとする。
NYHA分類 |
身体活動能力 |
最大酸素摂取量 |
I |
6METs以上 |
基準値の80%以上 |
II |
3.5~5.9 METs |
基準値の60~80% |
III |
2~3.4 METs |
基準値の40~60% |
IV |
1~1.9 METs以下 |
施行不能あるいは |
※NYHA分類に厳密に対応するSASはないが、
「室内歩行2METs、通常歩行3.5METs、ラジオ体操・ストレッチ体操4METs、速歩5~6METs、階段6~7METs」をおおよその目安として分類した。
3)気管切開、非経口的栄養摂取(経管栄養、中心静脈栄養など)、人工呼吸器使用の場合。
4)腎不全を伴う場合。
腎:CKD重症度分類ヒートマップが赤の部分の場合
CKD重症度分類ヒートマップ
歯科における配慮
知的発達障害に起因する、口腔清掃不良に対する専門的口腔ケアなどの定期的な管理は必須となりますが、
①心奇形を伴う場合、抜歯などの観血的処置の場合は、IE(感染性心内膜炎)予防のための予防的抗生剤の処方。
②心不全の重症度に応じて、歯科治療時に局麻剤の選択、モニタリングを行います。抗凝固薬服用時は出血に対する配慮も必要になります。(基本的に休薬は行いません)
③抗てんかん薬の副作用による歯肉増殖を有する場合、歯肉切除の必要性を検討します。
④先天性疾患を伴う矯正治療(口唇口蓋裂・ダウン症など50の先天性疾患があります)の歯科矯正科との連携。
⑤脊柱側彎症を伴う場合は、歯科治療時の体位に配慮が必要です。
など、他科との対診、連携が必要となります。