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.障害者診療

Rett症候群について

レット症候群は、広汎性自閉性障害に分類される症候群です。

広汎性発達障害とは、言葉によるコミュニケーション障害や特異な常同行動を伴った発達障害です。
主なものは、Rett症候群、小児崩壊性障害、自閉性障害などが含まれます。

Rett症候群

後天性小頭症、重度精神遅滞、手の能動的動作消失と特異な常同運動(手もみ運動)、特徴的歩行障害を主徴とします。女性のみに発症。

合併症は、睡眠障害、側彎、間歇的過呼吸、無呼吸発作、てんかん、発育不良、四肢末端の冷感があります。

歯科的な問題としては、ブラキシズム歯列不正などがあり、てんかんへの対応やブラキシズムに対しては、ナイトガードを作製します。
無呼吸発作では、チアノーゼとともにSPO2が急激に低下するため、モニタリングと酸素吸入を行います。

知的発達障害のため、意識下での歯科治療が困難な場合は、鎮静、全身麻酔など薬理学的な行動調整が必要になります。

小児崩壊性障害

乳児期までは、定型的な発達をしていますが、3歳前後に突然、数か月で言葉を消失、それまで発達していた精神機能が著しく退行しコミュニケーション障害と重度の精神遅滞になり、その後回復が見られません。

 

以下は、難病情報センターからの引用になります。

 

1. 「レット症候群」とはどのような病気ですか

 

乳幼児期に症状が現れる発達障害で、ほとんど女児におこります。

症状や病気の程度には大きな幅があります。
病気の約8割以上を占める典型的な患者さんでは、生後6か月くらいまでは一見正常に見えますが、それ以降に、体が柔らかい、四つ這いや歩行などの運動の遅れ、外界への反応が乏しい、視線が合いにくいなどの自閉症状が出ることが多いです。
多くは1歳6か月から3歳までに、今まで使っていた手の運動が上手にできなくなり、手を合わせる手もみ、手絞り様、一方の手で胸を叩くような動作などの、特有な手の常同運動が出現します。
この時期に四つ這い、歩行などの運動機能もできにくくなり、それまで出ていた言葉が出なくなったりする退行現象が認められます。
また、必ず出る症状ではないですが、頻度の高い症状として、けいれん、呼吸の異常、頭囲の発育の伸びが鈍くなるなどの症状が現れます。
診断は上に述べたような、発達の特有な病歴、診察所見でおこないます。

 

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

 

日本の厚生労働省の研究班で行われた20歳までの 有病率 調査では、推定で約1,020人であり、1万人の女児に0.9人くらいの有病率と報告されています。

 

3. この病気はどのような人に多いのですか

 

世界での報告では、すべての国に発生すると考えられていますので、大きな人種差は無い可能性があります。
またほとんどが女児であります。その理由は、以下に述べます遺伝子と関連していると考えられています。

 

4. この病気の原因はわかっているのですか

 

典型例の患者さんの約90%はMethyl-CpG-binding protein 2 gene (MECP2)が主な原因遺伝子である事がわかりました。
その他、非典型例で、早期からけいれんがあり発達が遅れている方たちの原因遺伝子としてリン酸化酵素 cyclin-dependent kinase-like 5 (CDKL5)をコードしている遺伝子 変異 (CDKL5) 、転写因子forkhead box G1(FOXG1)をコードしている (FOXG1) 遺伝子異常などが見つかっています。

 

5. この病気は遺伝するのですか

 

MECP2変異によるレット症候群は、X連鎖性優性遺伝の遺伝形式ですが、ほとんどの患者さんは、遺伝傾向はなく一人だけ(孤発例)の発症です。
ご両親を調べた調査でも、患者さんの代におこった新たな突然変異と考えられていますし、家族内での同胞発症は、ほぼありません。
しかし、極めて稀に、変異MECP2のあるX染色体が選択的に不活化されて母親保因者 から遺伝する場合、および精子や卵子の前駆細胞である生殖細胞の病的変異モザイクを持つ親から遺伝する報告があります。

 

6. この病気ではどのような症状がおきますか

 

重度の知的障害、言葉の遅れ、自閉症状、てんかん発作、後天的な小頭症、歩行時の異常、フラツキ、体が硬くなり、捻じるような動作、夜間に覚醒して騒ぐ、睡眠障害、歯ぎしり、過呼吸―無呼吸を交互に繰り返す呼吸障害、および小さく冷たい手足、頑固な便秘などの自律神経症状、脊柱の側彎などがおこります。

 

7. この病気にはどのような治療法がありますか

 

根本的な治療法はまだ開発されていません。
モデル動物では、骨髄移植、遺伝子治療がされて、一定の効果が報告されていますが、ヒトでの応用は難しいと考えられています。
現在、インシュリン様成長因子(IGF-1)の皮下注射、その他の新規の治療薬開発が世界で開始されています。
現時点では、症状による対症療法がおこなわれています。運動に対して理学療法、作業療法、言語に対する言語療法、けいれんに対して抗けいれん薬の調整、側弯に対するコルセット使用、整形外科的治療、歯科治療、その他、水泳、音楽療法などが試みられています。

 

8. この病気はどういう経過をたどるのですか

 

症状は年齢によって、さまざまな症状が出現するため、以下の4つのステージに分けて理解するとわかりやすいです。
日本での調査からの典型例の場合を示します。

第1期:発達停滞期(生後6~18か月)、通常数か月続く。四つ這い、歩行などの運動の遅れに気づき、喃語や意味のある言葉が出た後に、言語の発達がみられなくなる。

第2期:退行期(1~4歳から)、数か月続く。運動、言語の急激な退行がみられる。おもちゃやスプーンを持てなくなり、目的に沿った運動ができなくなり手もみ、手絞り、手を口に持って行き、片手で胸を叩くなどの常同行動が出ます。歩行できていた子どもさんは、歩行障害が出現し、周囲とのコミュニケーションができなくなります。

第3期:仮性安定期(2歳~10歳に始まり、数年から数十年続く)。急激な退行の後に、症状は安定している時期です。視線はよく合うようになります。手の常同運動や呼吸異常、歯ぎしりなどは顕著に認めます。てんかんはこの時期に多く、約40-80%に認め、筋緊張は次第に 亢進 してきます。

第4期:晩期機能低下期(10歳~)。動きが減り、足や手を使わないために細くなり車いすが必要となります。筋緊張が更に亢進し、ジストニアと言われる不随意運動 が著明になり、脊柱側弯、運動機能が低下します。骨折のリスクも増えます。

 

9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか

 

けいれんに対しては、長い時間続くけいれんがないように薬を調整します。 
嚥下に時間がかかり、便秘が多いのでお薬を使用することもあります。
食事はむせないように、トロミをつけるなどの工夫をします。誤嚥性肺炎の予防が必要な事があります。骨折は一般頻度より多いことが報告されていますので、定期的に骨密度などを測定し、活性型ビタミンDやカルシウム摂取などを必要とすることがあります。
QT延長などの不整脈が出ることが報告されているので、1年に1回くらいの心電図の定期フォローアップが必要です。
側弯が進行しないように、整形外科に相談し、コルセットを作成することもあります。
歯科的には、歯ぎしりのため、歯がすり減ったり、歯肉炎、虫歯などの予防が必要です。

 

 

用語解説

退行(たいこう):以前できていた事ができなくなること。歩行獲得していたのにできなくなる、言葉が出ていたのに出なくなるなど。

常同運動(じょうどううんどう):同じパターンで繰り返されるリズミカルな運動で、意味を持たない運動と考えられている。

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