静脈内鎮静法では、静脈麻酔薬を注射し、生体情報モニタ(呼吸、血圧、脈拍、モニター心電図など)を監視しながら歯科治療を行います。麻酔薬の投与量は体重を基準に決められますが効き方には個人差がかなりの幅であります。同じ体重の方だと麻酔薬の投与量はほぼ同じなのですが、呼吸が浅くなるくらい鎮静してしまう患者様もいれば、簡単な会話ができてしまうような患者様もいます。いま、患者様がどのくらい鎮静されているかが分かればその患者様に適切な薬の量がはっきりとしてきます。
原田歯科では、鎮静モニタとしてBISモニタを使用しています。BISモニタは前額部に4つの電極をつける脳波計で、その脳波を解析することでどのくらい鎮静、催眠が得られているかを0から100の数値(BIS値)で示します。BIS値は、血圧などと違い実測値ではありません。3,4種のパラメーターにあらかじめ統計学的に解析して得られている係数を用いて導かれた数値であるため、「おそらくこの程度の鎮静度」という推測値です。100が覚醒、0は脳波が平坦ということです。
BISで用いられる脳波(EEG)の周波数は筋電図(EMG)のものと近いためEEGにEMGのノイズが入ってしまうとBIS値が高めに出てしまうことがあります。そのため、2チャンネルのEEGを導出しEMGのノイズを取り除くようにされていますが、すべてを取り除くことはできないため、脳波と絡みの少ない70-110HzのEMGを表示し、それらをもとにSQIバー(Signal Quarity Index)(どれくらいBIS値がEMGの影響を受けていないか?ケイタイのアンテナの棒のような表示)でどのくらいBIS値を信頼してよいかわかるようにしてあります。たとえばBIS値70-80の中程度の鎮静の場合、ドルミカムの場合5-10程度EMGによる数値の押上げがあるなどといわれます。
BIS値は、鎮静剤の影響だけではなく、鎮痛がどれだけできているか、どれだけ侵襲の大きい手技をしているかなどですぐに変動してきます。いくらぐっすり寝ている人でも、思いっきりたたかれればおきてしまうことと同じです。そっとしておけばまた深い眠りについてしまいます。そっとしておいてもBIS値が上がってくるようなら、薬の量を増やしていきます。
BISモニタは、鎮静モニタとしてはかなり信頼でき、画期的なものですが、それだけでというわけにはいきません。しかし、生体情報モニタ(呼吸、循環のモニタ)プラスアルファで使うといままで鎮静のクオリティをあげることは間違いないようです。