HOME

治療紹介

原田歯科医院

スペシャルニーズ歯科(障がい者歯科)・歯科訪問診療

ゆりかごから墓場まで、安心してかかれる歯科医療を提供します

スペシャルニーズ歯科(障がい者歯科)・歯科訪問診療

スペシャルニーズ歯科(障がい者歯科)
歯科訪問診療

ゆりかごから墓場まで、安心してかかれる歯科医療を提供します

日本歯科麻酔学会 施設紹介

この記事は、令和2年4月に日本歯科麻酔学会発行のニュースレターの施設紹介に取り上げられた際の原稿となります。

 

原田歯科医院 スペシャルニーズ歯科・歯科訪問診療センター

(東京都八王子市)

院長 原田 達也

 

こんにちは。私は、原田歯科の院長の原田達也と申します。この度、当施設を歯科麻酔学会の施設紹介に取り上げていただき大変ありがとうございます。

 

当施設の概要

 

当施設は、1996年に私が個人で開設した歯科医院です。東京医科歯科大学障害者歯科治療部に在籍していた時に、佐野晴男先生(現昭和大学客員教授)の影響もあり、ぜひ将来は障害者歯科診療をライフワークにしたいとぼんやり考えていました。

しかし、いざ開業すると健常者の歯科診療で忙殺され、障害者歯科診療から遠ざかっていました。徐々に、通法では対応できない患者が多くなってきたため、東京医科歯科大学歯科麻酔科の深山治久教授にお願いして、静脈内鎮静法の勉強のため入局、その後、明海大学歯科麻酔科教授の小長谷光先生にお願いして、全身麻酔の勉強をさせて頂きました。

いろいろ回り道をしましたが、開設から22年後の2018年に、東京医科歯科大学障害者歯科准教授の篠塚修先生、小長谷光先生、島田療育センターの稲田穣先生のご尽力もあり、都内で唯一の個人開設の一般社団法人日本障害者歯科学会臨床経験施設となることができました。

現在は、歯科医師は5名いますが、フルタイムの常勤医は私のみで、残りは明海大学の歯科麻酔科から3名、東京医科歯科大学の障害者歯科から1名(現在は退局)の非常勤歯科医師となります。認定医取得状況は、日本障害者歯科学会認定医は3名、日本歯科麻酔学会専門医1名、同認定医2名となります。

歯科衛生士は常勤7名、受付は常勤2名、非常勤3名となります。

 

当施設の特徴

①バリアフリーとノーマライゼーション

ノーマライゼーションとは、障害のあるなしにかかわらず普通の生活ができるように社会の条件を整備して様々な人が共生できる社会こそがあるべき姿だとする考え方です。一番わかりやすい事例は、車いすの方の入店を階段があるとか、対応できる人手がないからとお断りしてしまうことを無くして行こうという考えです。

当施設では、障害者と健常者を支援や管理の手法は違っても、時空を分けて診療することはありません。基本的に「ごちゃまぜ」で診療しています。当然、待合室は、知的障害、自閉症、脳性麻痺、ダウン症の患者さん、健常者の患者さんなどが「ごちゃまぜ」で順番を待っています。待合室で待てない患者さんは車で待機して順番が来たら携帯で連絡します。当施設は、3階建てとなっており、1階は待合室、2階は3室の診療スペースで、通法から静脈内鎮静法までの管理下の診療を行います。3階は2室あり、通法から抑制、静脈麻酔、全身麻酔までの管理下での診療に対応できるようになっています。全階バリアフリーで、各階の移動はエレベーターで行います。車いす、オストメイト対応の多目的トイレは1階に設置しています。

「ごちゃまぜ」は変えるつもりはありません。2016年に神奈川県相模原市津久井郡の「津久井やまゆり園」における殺傷事件がありました。この事件は、障害に対する知識不足、無理解、誤解、偏見などのため、感情や意識の共有がなされずに障害のある方が受ける軽視や無視、恥辱、差別など、いわゆる「心理的バリア」が根底にあると考えています。そのようなバリアを取り払うためには、日ごろから障害のある方と時空を共有することが必要だと考えています。時空を分けていたほうがよいと考える方もいらっしゃることも理解していますが、当施設のような個人開設では、行政や歯科医師会からの縛りがありませんので、そのあたりは我が道を貫いて運営しています。

②障害者歯科医療を不採算部門にしない

当施設はいわゆる開業医です。公費の助成も委託も受けていませんから、赤字であれば当然閉院となります。周りを見渡すと、障害者のための歯科診療施設が不採算とのことで、少しずつ閉鎖されています。下手をすると最後の砦である口腔保健センターさえもない地域があります。障害者の歯科診療はリスクが高いのに、全然もうからないとなれば地域で障害者診療を積極的に取り組む歯科医師はいなくなります。

原田歯科が障害者診療を一生懸命やっていて、いつも赤字すれすれでスタッフの給料もきちんと出せないようでは、それ見たことかとなります。

逆に、障害者歯科診療に取り組んでいるから患者さんも増え、収益も上がり、スタッフに平均以上に給料が払えるとなれば、見る目も変わります。このように、きちんと収益を上げるということはとても大切なことで、不採算にしないためにいろいろと工夫をしています。

一例をあげれば、原田歯科は、静脈麻酔下歯科治療を保険診療で行っています。全例にNIBP, SPO2, ECGはもちろんBIS, ETCO2などの高度なモニタリングを行っていますが、赤字にはなっていません。paperChartによる自動麻酔記録化をはじめ、麻酔担当の歯科衛生士2名のトレーニングを行い、鎮静タワーを自作し、麻酔医が麻酔管理に集中できるように徹底的に無駄を省き効率化をしました。鎮静タワーの構築は、歯科界でpaperChartの第一人者である小長谷光先生にお願いしました。また、マルチタスクは他業界では当たり前なので、麻酔医の先生の手が空いていれば、歯科診療をお願いすることもあります。

キャンセルによる空き時間対策も重要です。受付が患者さんと密に連絡を取ることにより短時間で空き時間をつぶすことができるのも、患者さんが近隣に居住している地域の歯科医院のメリットかもしれません。

臨床内容

院内は基本歯科医師2名、歯科衛生士5名で診療を行っています。通法から静脈内鎮静法までの歯科治療は常時対応可能で、深鎮静など高度な麻酔管理が必要な症例は、歯科麻酔専門医、認定医の勤務日に行うようにしています。どうしても、一定の曜日に麻酔管理が必要な治療が集中してしまうため、1日7例程度行うことがあり、かなりハードワークです。通法や抑制の患者を含め、1日40人から70人程度を診療しています。

訪問診療は、障害者歯科認定医の私、高橋翔平先生、明海大学歯科麻酔科の上杉典子先生が輪番で担当し、歯科医師1名と歯科衛生士2名が1組となり週3日終日行っています。

訪問先は、病院、特養、老健、居宅と様々で、1日10から25人程度を診療しています。

 

最後に

現在、原田歯科が何とかやっていられるのは前述の先生方、院内の歯科衛生士の皆さん、いつも無理なお願いを聞いてくれる受付の皆さんははじめ、患者さんやそのご家族の支援があってのことだと思います。一人ではとても無理です。

今後、障害者、高齢者の増加により歯科麻酔医の先生方の需要はどんどん高まってくると思われます。歯科治療医と歯科麻酔医がコラボレーションすることで、今まで歯科治療をあきらめていた多くの患者さんに手を差し伸べることもできるようになります。

パラリンピックで障害者に脚光が当たっていますが、歯科医療に関してはまだまだです。歯科麻酔医の先生方には、ぜひその知識やスキルを地域で積極的に発揮して頂けることを期待しています。

診療室風景(3階5室)

Copyright © Harada Dental Clinic All Rights Reserved.