静脈内鎮静法の現状を憂える
パニック障害、歯科治療恐怖症、異常絞扼反射の方からよく「静脈内鎮静法が保険でできる歯科とそうでない歯科があるのはなぜですか?」という質問を受けることが多くあります。
健常者の方は、いろいろインターネットを検索して原田歯科にいらしていることが多く、保険診療で静脈内鎮静法を行っている歯科医院が少ないことに気づき、保険診療で行っている当施設を探し出して来院していただいているためそのような疑問をお持ちのようです。
上記の質問に対する回答は、きわめて簡単です。
「歯科治療を保険診療で行う場合、静脈内鎮静法も保険診療で行わなければならない」からです。
障がいのある方の歯科治療(スペシャルニーズ歯科)では、静脈内鎮静法や全身麻酔は行動調整法として保険診療で行われています。
いわゆる健常者でも、パニック障害、歯科治療恐怖症、異常絞扼反射など行動調整法として静脈内鎮静法などが必要であれば保険診療で行うことが認められています。
保険診療で静脈内鎮静法が行うことができるかは、個々の医療機関の問題ですので、それができないのであれば
①保険診療で行える歯科に依頼する
②患者様の同意の下、歯科治療も麻酔もすべて自費で行う
しかありません。
その一方で、
他の診療科で、保険診療で行える手術や検査を行うときに麻酔が採算が合わないからすべて自費にするという話は聞いたことがありません。
実際、原田歯科には栃木、茨城、神奈川、山梨、埼玉、千葉県から何時間もかけて通院してきていただいている患者様が少なくありません。さらに遠方ですと、静岡、愛知の方もいらっしゃいます。
保険診療で、静脈内鎮静法で歯科治療を行う施設が近隣にないためです。
このような状況は良いとは思えません。
歯科治療で麻酔が必要な方は、麻酔なしでは治療が非常に困難なためで、快適さを求めているわけではありません。
知的障害、自閉症、発達障害、脳性麻痺、精神疾患などの患者様の場合は、意識下で無理やり治療を行うことでパニックをはじめ自傷(時に自殺)、他傷などを引き起こすこともあります。
その結果、ますます歯科受診が困難になっていきます。
この現状を少しずつ解決しようと多くの指導的な立場の歯科麻酔の先生方が奔走しています。
政治や行政が少しずつですが、この問題に目を向けていただけるのを待ちたいと思います。