静脈内鎮静法のお薬の話
今回は、静脈内鎮静法に使用する代表的なお薬の話になります。
実際に、この内容を詳細に書くと、この100倍くらいの内容になってしまいますので、簡略化された内容である点をご理解ください。
静脈内鎮静法は、通常ミダゾラム(抗不安薬)とプロポフォール(静脈麻酔薬)を使用します。
麻酔の深度により大まかに以下の二つに分かれます。
①意識下鎮静 問いかけに反応し、簡単な会話ができる状態。
②いわゆる深鎮静 問いかけに反応せず、(呼応反応がない)いわゆる意識がない状態。
ミタゾラムは、鎮静作用がありますが、前向性健忘効果があり、術中の記憶がなくなる作用があります。そのため、意識下鎮静か深鎮静であったかは患者さんにはわかりません。
鎮静の深さは、処置や手術を安全に行えるかどうかで麻酔医が調整します。
浅い麻酔深度で処置が可能なら意識下鎮静になりますし、体動や有害反射などが強く出る場合は、深鎮静、さらに麻酔深度が深くなると気道が閉塞したり、自発呼吸がなくなります。
そのような深い麻酔深度が必要な場合は、マスク換気や気管挿管、ラリンジアルマスク、i-gelといった気道確保器具を使用して人工呼吸を行う全身麻酔が必要になります。
基本的に、かみ合わせの調整などは呼応反応が必要で、意識下鎮静で行なわないと正確に行えません。
ミタゾラムは、半減期が長く、天井効果(投与量を増やしても、一定以上に効果は上がらない)があります。
そのため、多量に投与すると、回復に時間がかかるだけなので、健忘効果やプロポフォールとの相乗作用を期待して適切な投与量を決めていきます。
ミダゾラムは、フルマゼニルという拮抗薬(作用を弱める薬)がありますが、フルマゼニルのほうがミダゾラムに比べ半減期が短いため、いったん鎮静が拮抗されても時間とともにフルマゼニルの効果が減弱すると再鎮静がかかることがあるため、注意が必要です。
プロポフォールは、半減期が短く、用量依存的に麻酔の深度が深くできます。
そのため、TCIポンプというシリンジポンプを使うと、プロポフォールの投与量の調整が容易にできるため、その時点における必要な麻酔深度が速やかに得られます。
プロポフォールは、クリアランス(薬物の血液中から除去されやすさの目安)が大きく、代謝が速いため長時間投与しても回復が速いという特徴があります。ちなみに、現在のところプロポフォールの拮抗薬はありません。
プロポフォールは、制吐作用と覚醒後の多幸感があり、PONV(術後悪心、嘔吐)の発生頻度が低いとされています。