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自閉性障害とエクスポージャー法について
歯科治療に恐怖心を持つ人は少なくありません。
原田歯科には歯科治療だけではなく、診療室に入ることが難しい患者様も多くいらしています。
特に、自閉性障害を持つ方(以下自閉症)は、障がいの程度にもよりますが、自分が許容している日常以外のものを恐怖の対象とみてしまう傾向があり、歯科治療に対して大きなバリアがあることがよく見られます。
自閉性障害の方は、歯科治療が苦手です。歯科治療というよりも、自分がいつも安心して過ごしている場所と比べ、歯科治療の椅子や、ライト、耳障りな音、尖った器具すべてに対して恐怖を感じています。
自閉症の子たちは、はじめは治療椅子に横たわるだけでもパニックを起こしてしまうことがあります。ライトの位置が前回とずれていたり、コップの位置が違うだけでも不安に思い前回と同じ状態に戻さないと治療の椅子に座らない子もいます。
逆に、前回体験して大丈夫だったことは、非常に鮮明に記憶していて次回はすんなりと受け入れてくれることがよくあります。自閉症の子たちの行動変容や行動調整はこの特性を応用していくことで一定のレベルまでは受け入れ可能になることが多くあります。
歯科治療に対して協力度が著しく低い患者様の場合、治療中に不意な体動や逃亡の恐れがあり場合は、セイフティーネットとして、レストレイナーという防護ネット付きのベッドに寝てもらうことがあります。
はじめに、レストレイナーに寝ること自体が怖いことではないとわかってもらわなければ、口腔内を診察することもできませんし、簡単な予防処置もすることができません。
上記全てのことは、一回体験すれば実は全く痛くもないし、思っていたほど怖いことではないことがわかります。
保護者の方の許可の下、レストレイナーに寝る体験をしてもらいます。
はじめは、パニックを起こしたりする子もいますが、パニックを起こしている間は何もせず横で励ましています。
次第に、レストレイナーに寝ることが何でもないことがわかると落ち着いてきます。
天井にあるテレビで、アニメをずっと見ている子もいます。
そのタイミングで、レストレイナーの体験は終わりです。
そういった体験を積ませていくと、怖くないこと、痛くないことはかなり乗り越えられるようになります。
これがエクスポージャー法です。今まで、本当は怖くないのに、怖いと思っていたことを強制的に体験させることで、怖くないということをわかってもらう手法です。
この手法は、いくつかの注意点があります。
①発達年齢が体験する事柄に対して低すぎる場合。例えば、口腔内診査を行う場合、2~4歳程度の発達年齢が必要とされますが、その発達年齢に達していない患者様(レディネスがない)には適応がありません。
②パニックを起こしているときに、体験をやめてしまうと「怖かった」という体験として記憶に残ってしまします。危険がない限り、落ち着くまで励まして待たなければいけません。そのあたりは、我慢が必要です。
③スタッフはもちろん保護者の方が、体験後頑張った患者様ををほめてあげることがとても大切です。それが、正の行動の強化子となり、成功体験になります。
体験後、保護者の方が「怖かったね。」「痛くなかった?」等、負の行動の強化子を与えないようにしていただきます。
発達障害がある患者様でも、そういった体験を積極的に積むことで発達年齢も上がり、出来ることが増えていきます。
この手法は、発達年齢が一定のレベルに達している自閉症の患者様に比較的短期間にある程度までの歯科治療を受け入れてもらえるようになることが多いと思います。
発達年齢が必要とされる歯科治療に対して、明らかに達していない場合は、薬理学的な行動調整(鎮静や全身麻酔)などが必要になってきます。