統合失調症は、精神障害の中の代表的な内因性疾患です。以前は精神分裂症と言われていました。本症は、脳の病気と言われおそらくドパミンの過活動が一因と考えられています。頻度は、1000人中7-9人程度で青年期にほとんどが発症します。
統合失調症は4つの症状に区分されます。
①陽性症状 主として急性期に見られる症状で、誤った確信である妄想、刺激のない感覚とされる幻覚(幻聴が多い)
②陰性症状 慢性期以降に目立つ症状で、感情の平板化、思考の貧困、意欲、発動性の低下、快感の消失、引きこもり
③抑うつ
④認知機能障害
などが見られます。
統合失調症の精神科治療
従来の入院治療に代わり外来治療が一般的になってきています。抗精神病薬による薬物療法、社会復帰療法、支持的な精神療法などの組み合わせが行われています。薬物療法に関しては、リスペリドンやオランザピンなどの副作用の少ないとされる非定型抗精神病薬が使われます。多くの患者様は生涯にわたる維持療法が必要になります。
統合失調症患者様の口腔
多くの患者様の口腔は、程度の差はありますが極度に清掃状態が悪く、齲蝕、歯周病の多発が見られます。また、薬剤による副作用の口腔乾燥も見られ齲蝕の多発のさらなる要因にもなっています。
歯科治療における問題
本症においては、歯科治療に無関心、無協力な場合、妄想的な訴えを継続して訴える場合、奇異な行動を伴う場合などが見られます。
α1受容体遮断薬である抗精神病薬投与後に、アドレナリン含有の歯科用局所麻酔を注射すると、β2受容体を刺激しアドレナリン反転という血圧の降下を見ることがあります。原田歯科ではアドレナリン含有量の少ない局麻剤(1/160000程度)を使用し、モニタリングを行っています。
フェノチアジン系の抗精神病薬は、抗コリン作用があり、唾液分泌を低下させます。口渇のため、甘味飲料の多飲や自浄性の低下などが起こり齲蝕や歯周病が多発します。定期的な口腔清掃や齲蝕管理、歯周病の初期治療が行われないと口腔崩壊が起こります。
ハロペリドールなどの高力価の定型抗精神病薬の副作用としてアカシジア(静座不能)、ジストニア(不随意で持続的な硬直、けいれん)、パーキンソニズム、遅発性ジスキネジアなどの錐体外路症状を呈します。歯科では、口をもぐもぐさせるオーラルジスキネジアが有名です。
錐体外路症状は、咀嚼筋の異常緊張を引き起こし、歯痛、歯ぎしり、顎関節の脱臼、歯の破折、義歯の不調など終わりのない口腔内の問題を引き起こします。これれの症状は薬剤の減量、中止などで無くなることが多いようですが、難治の症例も見られます。
統合失調症は、口腔内の極端な清掃不良、齲蝕、歯周病の放置が見られます。生涯にわたり、歯科的な管理が必要な精神疾患です。