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筋強直性ジストロフィーについて
筋強直性ジストロフィー(MYD;myotonic dystrophy)
収縮した骨格筋が弛緩しにくくなるミオトニア現象、全身の筋力低下、筋委縮を主症状とする疾患です。成人で最も頻度の高い筋ジストロフィー症であり、病名のごとく筋強直お よび筋萎縮を特徴とします。しかし骨格筋だけではなく、多臓器を侵す全身疾患です。
常染色体優性遺伝であるが、子の世代のほうが症状が重くなるという表現 促進現象を認めます。軽症例では本症と気づかれないことも多く、出生時より著明な筋力低下を示す先天型筋強直性ジストロフィーというやや特殊な病態も あります。平均寿命は55歳程度とここ20年間改善がみられていません。
主な合併症
①糖尿病
②白内障
③心伝導障害(房室ブロックなど)
④多発性の内分泌障害(性腺、甲状腺、副腎、下垂体機能低下)
⑤易感染性
⑥腹痛、胃腸症状
⑦嚥下障害、構音障害
等、多彩な症状を呈します。
常染色体優性遺伝であり、10万人に5人程度が発症します。成人のミオパチーでは最多な疾患です。
好発年齢は20から30歳代、やや男性が多いとされています。
所見としては、手を握ると開きにくく、舌はたたくとクローバー状舌を呈します。筋原性の筋委縮が末梢から進行していきます。
胸鎖乳突筋の高度委縮、顔面筋、側頭筋、咬筋の萎縮と同時に頭蓋骨が肥厚するためにいわゆる「オノ様顔貌」が見れてます。
原因
DM1とDM2の二つのタイプが存在し、日本ではほとんどがDM1で あり、19番染色体に存在するミオトニンプロテインキナーゼ(DMPK)遺伝子の3’非翻訳領域に存在するCTG反復配列の異常な伸長が原因。反復 が35回以下が正常、50回以上が異常とされ、先天型では数千以上と非常に増加し、反復配列が異常に伸長したmRNAが、他のmRNAのスプライシ ングに影響をおよぼし多彩な症状を呈することが近年明らかとなってきています。
原疾患自体には基本的に無治療ですが、ミオトニアが強ければフェニトイン等処方されます。
歯科診療時の配慮
①側彎や呼吸機能低下を呈する患者さんの場合、誤嚥などのリスクがあるため治療時に唾液や水の誤嚥を起こしにくい、体位、吸引を心がけます。
②運動機能が低下していると、心機能の低下が顕在化しにくいため、術中モニタリングが必要となります。
③糖尿病や易感染性が認められるため、観血的処置の場合は抗菌薬の処方を十分に行います。
④合併症に対して、薬剤(ステロイド、BP製剤など)が処方されている場合は、プロトコルに従い対応します。
⑤嚥下障害による誤嚥性肺炎などの予防のために、定期的なスケーリング、口腔ケアなどのメンテナンスを行い、齲蝕、歯周病などの感染症を日頃から予防する必要があります。