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神経症について
歯科にかかられる患者様には、いわゆる不定愁訴、自覚症状のみで他覚的な診断ができない訴えを主訴に来院される方が少なからずいらっしゃいます。そのような患者様の中で今回は神経症について取り上げてみたいと思います。
神経症は、精神的な葛藤や、社会、家族などの外的環境の圧力などのような精神的刺激によって引き起こされた危機的な状況に対応できず、その反応として生じた心因性で可逆的な精神障害とされています。患者様は切迫した不安と苦痛を体験します。
様々な身体症状を伴いますがいろいろ検査をしても器質的な異常は認めることがほとんどありませんし、異常があっても患者様の訴えの原因にはなりにくいものしかありません。
神経症には、神経症性格と言われる性格的な問題があるとされています。
例えば、
①強い不安にとらわれやすい。
②些細なことにこだわり、気にする。
③葛藤に処理が苦手で、取り乱しやすい。
などがあります。
神経症の分類は、DMS-Ⅳ-TRにおいては、不安障害、身体表現性障害、解離性障害に分類されています。
①パニック障害
原因無く生じた強い不安のため、患者様がパニックを起こしてしまう障害です。歯科治療恐怖症には、本障害、恐怖性不安障害に相当するものが含まれます。歯科医と良好な信頼関係が築ければ、通法でも可能な場合もありますが、原田歯科では最低、笑気吸入鎮静法、通常は静脈麻酔による鎮静でないと歯科治療が難しい患者様が多いです。覚醒は、急激に行うとパニックを起こしやすいので、緩徐におこないます。
②強迫性障害
自分で振り払うことのできない強迫観念に伴う不安を鎮めるために、強迫行為を繰り返えす精神障害です。何度も同じことを繰り返し確認したりすることにより、障害が重度になると歯科診療ができなくなることがあります。
③身体表現性障害
いろいろな身体症状を訴えますが、それを説明できる他覚的なレントゲン所見、検査所見が見当たりません。本障害に含まれる心気症は、些細な症状を重症と思い込み、強い不安にとらわれ、長期間思い悩むもので、よく歯科領域でも見かけることがあります。たとえば、何か口腔内にかすかな痛みを感じると、口腔がんなどと思い込み頻繁に受診を繰り返すようなことがあります。
④身体化障害
身体化障害は重度の慢性疾患で、身体疾患では説明しきれないさまざまな身体症状が繰り返し発生するのが特徴です。症状には、痛み、胃腸症状、性的症状、神経症状の組み合わせがあります。 歯科では、痛みに関することが圧倒的に多く、患者様の訴えに対しては、きちんと検査をして身体化障害であるという先入観なく診断をして、治療が必要かわかりやすく繰り返し説明します。他覚的な検査所見がないのに、患者様の言いなりに治療をしないようにします。中には、治療を行ってくれる歯科医を求めてあちこち歯科を渡り歩く患者様もいます。
⑤身体表現性障害の中の疼痛性障害
心因性疼痛ともいわれ、強い痛みを常時訴えますが、他覚的な異常所見が見当たりません。歯科では、強い歯痛、顎関節、咀嚼筋の痛みなどがあります。ただし、痛みに対する回避行動(例えば強いかみしめ、極端な片側咬みなど)により、咬合痛、歯髄炎や、顎関節症を新たに引き起こしていることもあったり、実は三叉神経痛などであったりすることもあるので、先入観なく検査を繰り返していくことになります。
⑤転換性障害
以前はヒステリーと言われていたものの一部で、心理的な葛藤が無意識のうちに運動障害や感覚障害に置き換わってしまったものをいいます。歯科では、開口障害、閉口障害、口腔内の感覚麻痺などがあります。実際に、短期間なことが多いですが、麻痺や触覚を失うことがあります。
いずれにしても、精神科と連携をしつつ、原疾患の治療をして頂くことが優先されます。