歯科と麻酔
原田歯科の患者様の傾向は、「高、病、恐」の3文字で特徴付けられます。最近、この3文字に特化してきてるといっても過言ではありません。
高齢者の患者様、有病者の患者様、歯科恐怖症の患者様です。この傾向は、当院に限ったことではなく、程度の差はあれ全国的な傾向です。
基本的に歯科の外来で行われている治療自体の侵襲は、さほど大きなものではありません。ただ全身疾患を扱う内科に行くよりも、マイナーな歯科にいくほうが抵抗感があるのはなぜでしょう。それは、歯科が「痛み」を連想させるからだと思います。またそれに伴う漠然とした「恐怖」「不安」を感じさせます。自分も知らない歯科医に治療してもらうのは、少し抵抗があります。(笑)
「痛み」「恐怖」「不安」などは、ある意味生命を守るための警告のようなものですが、警告がゆえに体に大きなストレスをかけます。「高、病、恐」の患者様にはほぼ拷問です。全身麻酔の草創期に歯科医の名前が出てくるのは、当時から「痛みなく歯を抜きたい。」という強いニーズがあったからに違いありません。
歯科疾患は言い方は変ですが、万人に平等にあたり前のようにやってきます。乳児から、死を迎える寸前のターミナルの患者様まで。健康な方から重篤な全身疾患を持った方まで。無鉄砲な方から、ものすごい怖がりの人まで。
開業歯科医としてやってきた当初は、きちんと検査をして、現症、治療法をていねいに説明し、局所麻酔をしっかり行い、エビデンスに基づいた治療を行えばほとんど問題は出なかったように思いますが、最近は口腔崩壊している患者様の集中治療、口腔外科小手術、精神疾患、恐怖症の方への静脈内鎮静下治療など口腔内だけ診ているのではすまない治療が多くなってきました。高齢化に伴い20年前と比べ物にならないくらい、有病者率が上がっています。
歯科治療の手技はある意味無機的な側面がありますが、それを大きなストレスと感じる患者様に行うことは麻酔科的な手法、管理なしでは難しいなと思います。またこれからの時代、それらを行う開業医のほとんどが一人開業でありつづけることがよいのかも気になります。そのような事情があり、原田歯科では麻酔、全身管理に精通し、歯科治療を熟知した歯科麻酔の先生をお迎えすることになりました。歯科にとって麻酔の重要性はますます高まりそうです。ただ、その底辺には患者様との信頼関係の底上げが以前にもまして必要なのかもしれません。
日本人の質(クオリティ)の変化が、ジワジワと進んでいるのがよく分かります。自分も高齢化しているので、えらそうなことはいえません。変化についていけるか、少し不安です。(笑)