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レストレーナーのレスポンド条件付け(古典的条件付け)について
発達障害、歯科治療恐怖症のお子様の場合、恐怖刺激から逃避する傾向が強く見られます。
本来は、発達に障害があるお子様はむし歯がない時期から歯科を受診し、家庭での歯みがきを習慣づけることが非常に大切なのですが、発達障害の診断を受けて、早期に歯科受診をすすめられたという話はあまり聞きません。
発達障害のお子様にとっては、歯科治療は恐怖の連続です。
むし歯にならなければ、歯科治療の必要はありません。
むし歯の予報処置なら、大半の発達障害のお子様は受け入れてくれます。
現実問題、発達障害のお子様で、初診来院時にすでに複数の中程度以上の齲蝕(むし歯)がある状態で来院される場合が少なからずあります。
その傾向が強いお子様の場合、時には年齢を問わず
①治療の椅子に座ること
②口腔内を診察する
など基本的な痛みを伴わない行為さえ逃避してしまうため行うことはできません。
そのため、今後の歯科治療の必要性を想定して、保護的な支持具であるレストレーナーを受け入れてもらうことが今後歯科的な管理をする上で非常に重要になります。
歯科の治療台に横になる代わりに、レストレーナーに横になるだけです。
レストレーナーは、治療の際に体動が原因で、事故が起こらないために使用するネット付きのベッドです。
クルマでいうとシートベルトのようなものです。
シートベルトも昔は、子供が嫌がるからつけないとか、可哀そうなどというドライバーもいましたが、安全に対する認知度が上がり、さすがに現在はそのようなことをいう方はほとんどいなくなりました。
それに比べると、歯科のレストレーナーは、以前のシートベルト以下の認知度です。
下手をすると、虐待にされかねません。
ただ、痛みで毎晩泣いている子やさらに進行して口の中がボロボロになっている子の歯科治療は、いつか誰かがしなければいけません。
レストレーナーの受け入れ(同意)の問題は、かなりシビアな問題で、軽度の知的障害のお子様の保護者の方の半数ぐらいは同意がいただけません。
子供を拘束して、無理やり治療をすると思われていたり、子供が嫌がることはしたくないとのお考えの保護者の方もいらっしゃいます。
レストレーナーに横になること自体は痛みを伴わない行為ですが、レストレーナーを使用した状態で痛み刺激を与えると
レストレーナー=痛み刺激
という学習をするようになります。
そのためレストレーナーを受け入れるにあたって痛み刺激のない口腔内診査、介助歯磨きなどを繰り返し行い
レストレーナー= 痛みのない刺激
ということを学習することが必要になります。
これはパブロフの犬の実験で有名な手法です。
初診時にむし歯がなく、検診、予防処置だけのお子様の場合は、レストレーナーの受け入れはスムーズなのですが、歯科治療がいきなり必要な状態で来院される発達障害のお子様の場合そのような学習の時間が取れません。
歯科治療は、発達障害のお子様にとっては、恐怖刺激の連続になりますので、自発的に治療を受け入れることは非常に困難です。
そのため、歯科治療が自発的に難しいと判断されたお子様の場合、
一番望ましいのは、
①治療に関して時は、むし歯の進行止めや痛み止めなで一時的にしのぎ、レストレーナーの条件付けを可能な限り繰り返してから、レストレーナー下での治療を行う。
歯科治療の緊急性が高い場合は、
②一番避けたいケースですが、学習なしでレストレーナーを使用します。
その場合、治療後も「レストレーナー=痛みのない刺激」を学習するために、介助歯みがきなど痛みのない行為でレストレーナーの条件付けを繰り返していきます。
③治療の時に、どうしてもレストレーナーを使用したくない場合は、薬理学的な行動調整(鎮静や全身麻酔)で歯科治療を行うようになります。
年齢が高くなると、発達障害の方は大半がこちらになります。
その後、自発的に歯科治療が可能になるお子様の場合は、レストレーナーなし(通法)に切り替えます。
上記の内容をご理解して頂き、発達障害のお子様で、
初診来院時にすでに複数の中程度以上の齲蝕(むし歯)がある、拒否の強い発達障害のお子様の場合は、保護者の方にレストレーナー使用に関する同意をいただきたいと思います。
とはいえ、同意がいただけない場合も当然ありますので、そのような場合は以下のように対応しています。
短期間には自発的な歯科治療の受け入れは困難なため、月1回、15分間程度で可能な範囲での口腔内診査、介助歯みがき(可能であれば、フッ素やむし歯の進行不止めの塗布)などを繰り返していきます。
これらを繰り返しても、むし歯発生を4割程度減少させることはできますが、むし歯ができなくなるわけではありません。
緊急に治療が必要な場合、体動調整はレストレーナーを使用いたします。(人手による抑制は危険を伴うため、当施設では行いません。)
このように治療の時だけレストレーナーを使用すると、
レストレーナー=痛み刺激
と、学習してしまい、レストレーナーや歯科治療に対する拒否や逃避行動が一層強くなる場合があります。
その点、ご了承の上ご判断してください。