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パニック障害と歯科治療
原田歯科で鎮静下で治療を希望される患者で、最近パニック障害の患者様の割合が多くなってきました。
パニック障害とは、「パニック発作」「予期不安」「広場恐怖」を三大症状とする病気です。100人におよそ1人が発症するといわれています。
パニック障害は、三大症状である「パニック発作」「予期不安」「広場恐怖」と、それに引き続くうつ症状が特徴的です。
パニック発作は、何の前触れもなく突然生じて、激しい動悸、息苦しさ、めまいなどの症状を起こす発作です。パニック発作による症状は「自分は死んでしまうのではないか」と思うほどで歯科の診療台に座るだけで発作を起こすこともよくあります。
パニック発作を繰り返すことで、また発作を起こすのではないかと心配することを予期不安といいます。パニック発作は時間と共に治まりますが、一度治まった後もしばらく時間をあけて繰り返します。すると、パニック発作を起こしていないときであっても、また同じ発作が生じるのではないかという心配を伴うようになります。
いつ生じるかわからない発作に備えて、助けを得られない状況などを避けようとすることを広場恐怖といいます。その結果、いつ生じるかわからない発作に備えて、助けを得られない状況や、発作から逃げられない状況を避けるようになります。
行動制限によって、外出を避けるようになると、日常生活を送ることが難しくなり、生活の質が著しく損なわれてうつ症状がみられることがあります。
パニック障害の患者様の歯科治療
まず、甲状腺機能亢進症(バセドウ病)、不整脈、WPW症候群など他疾患の疑いがないか、患者様への問診や主治医の先生への対診を通し、合併する疾患、服薬状況などを確認します。
そのような患者様は、アドレナリン感受性が高まっていることが多いため、局所麻酔薬のアドレナリンの濃度を希釈して使用したほうがよいことが多くあります。
麻酔管理に関しては、以下の選択肢があります。
①静脈内鎮静法(時に深鎮静)
症状の重い方の場合は、すべての治療は鎮静下に行います。静脈確保時にパニックを起こす方がいますので、患者様が発作を起こしにくい状況下で静脈確保を行います。椅子に座ることが難しい場合などは立位で静脈確保を行い鎮静して、緊張が薄らいできてから治療台に誘導したりいろいろ配慮が必要です。
治療が終わり覚醒時には、フルマゼニルなどの鎮静薬の拮抗剤は極力使用しないようにします。急激な覚醒はパニックを誘発します。
②笑気吸入鎮静法
笑気はマスクを装着するため逆にパニックを誘発、不快感を訴えることがあるので、マスクが難しい方は鎮静もしくは通法で行います。原田歯科における患者様からの聞き取りで笑気吸入鎮静法が有効な患者様は不安感が3割程度に軽減しているとの調査結果が出ています。
③通法
軽症の方の場合、治療時に絶対に痛みを感じさせないように局所麻酔をしっかり行います。治療は手際よく手早く行えば大半の方は歯科治療を受け入れていただけます。
原田歯科では、通常局所麻酔が必要なはずがないと考えられる場面でも局所麻酔をする場合がよくあります。
時々、局所麻酔が効きにくいという患者様がいますが、通常、炎症のある部位を除いてはそのようなことはないとされています。
そのような場合は、局所麻酔の手技に問題があるか、不安や恐怖心で脳内の痛みを認識する刺激に対する閾値が著しく低くなってしまっていることがほとんどです。
逆に、パニックを起こし、短時間ですが口腔内の感覚の麻痺を起こしてしまった患者様もいました。
多くのパニック障害の患者様の聞き取りで、歯科医師が局所麻酔が効いていない状態で治療を行い、その時の痛みの経験が心的な外傷になり歯科治療ができなくなってしまったという症例が多く見られます。