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ノーマライゼーションとバリアフリーについて
ノーマライゼーションとは、障害のあるなしにかかわらず普通の生活ができるように社会の条件を整備して様々な人が共生できる社会こそがあるべき姿だとする考え方です。一番わかりやすい事例は、車いすの方の入店を階段があるとか、対応できる人手がないからとお断りしてしまうことを無くして行こうという考えです。
ノーマライゼーションのためには、それを妨げるバリア(障壁)をなくすことが課題となります。バリアとは、どのようなものがあるのでしょうか?
①物理的バリア
道路や建物の内外にある段差、階段、坂など歩行や車いすの邪魔になるもの、高い位置のスイッチや狭い通路、出入り口などの事です。
障害のある方の利用が多い施設であればあるほど、具体的に患者さんからどこが物理的なバリアになっているかはっきりしてきますから、それをプロトタイプとしていろいろ頭を使ってバリアをつぶしていくしかありません。入り口に段差がある場合は、スロープをどこかに作るとか、2階以上の診療室にはエレベーターを付けるとかです。また、自分が車いすで模擬体験してみるのが一番良いように思います。
この点に関しては、原田歯科は反省点が多く、今度の改修で挽回したいと思っています。
②社会的バリア
制度上の問題で障がい者にとって支障となる資格取得、就職、助成、受給における欠格事項、制限など。
日本では、1949年に身体障害者福祉法、1950年に精神衛生法(現精神福祉基本法)、1951年に社会福祉事業法(現社会福祉法)、1960年に精神薄弱者福祉法(現知的障害者福祉法)、1970年に心身障害者対策基本法(現障害者基本法)が制定されました。
その後、1975年の国連の「障害者の権利宣言」後ノーマライゼーションが叫ばれ、1993年に障害者基本法が施行、その基本理念に「すべての障害者は社会を構成する一因として社会、経済、文化その他のあらゆる分野の活動に参加する機会をあたえれるものとする。」という考えが加えられ、共生の理念が明記されました。その後、2000年に社会福祉法、介護保険法は制定されました。
そして2004年には障害者基本法の目的、「障害者」定義、基本理念に改正が加えられ、「障害者の自立および社会参加の支援など」の促進が明記され、基本理念として」「何人も、障害者に対して障害を理由として差別することでその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない」と規定されました。その後、2006年に障害者自立支援法が制定されます。
このように、法律、公的な部分では進歩がみられるのですが、民間ベースになると競争の原理が働き、公的な助成などを増やしていかないといけない状態になってきています。
③文化、情報のバリア
視覚、聴覚、知的障害のため必要な情報を取得できなかったり、仮にできたとしてもそれを利用することができないこと。
原田歯科では聴覚障害の障害の方とのコミュニケーションツールは、今までホワイトボードでの筆談を使っていたのですが、最近ではスマホのメールの画面に音声入力ツールで文字を表示させ、その画面を診療台の大きなモニターにワイヤレスディスプレイアダプターを付けてコミュニケーションを行うようにしました。そのことにより今までの1/3程度の時間で、必要な説明ができるようになりました。その後、こちらの説明内容を患者さんのスマホに送信したり、プリントアウトすることもできますので、とても役に立っています。費用もほとんどかかりません。これはほんの一例ですが、今後IT活用することで、知的障害はともかく、視覚障害や聴覚障害に関してのコミュニケーションツールは格段に進歩していくだろうと思われます。
④心理的バリア
障害に対する知識不足、無理解、誤解、偏見などのため、感情や意識の共有がなされずに障害のある方が受ける軽視や無視、恥辱、差別など。
基本的に、原田歯科ではいわゆる健常者の患者さんと障害のある患者さんを時空を分けて診療することはありません。むしろ、逆に分けて診療することのほうがおかしいと考えています。そんなことをしたら、全くノーマライゼーションでなくなってしまいます。
当然、患者さん個別に配慮や管理はしつつ、「ごちゃまぜ」で診療しています。外見で障害のわかる方もいますが、一部の自閉症や精神疾患、内部障害、歯科治療恐怖症や異常絞扼反射、パニックの患者さんなどは見た目はほとんど区別がつきません。待合室で待機できる方もいますし、駐車場の車中で待つ方もいます。そのような患者さんは順番が来たらたらスマホで連絡します。パニック障害で雨が降ると気圧のせいか、来院できなくなってしまう方もいます。多種多様な対応が求められますが、患者様の障害に対する知識があれば、そういう配慮は必要なことなのだとわかります。ただそれに気づくには、そういう方と接した実体験がないと難しいかもしれません。