保険診療におけるメタルフリー修復の現状
最近保険診療ではCADAM冠の普及が進み、メタル(金属)を使用しない修復がずいぶん増えてきました。今回は保険診療でどのようになっているか、おさらいしたいと思います。
メタルを使用しない修復は
①CR充填(コンポジットレジン充填)
セラミックとレジンのハイブリッド材料で最近のものは光重合ものがほとんどです。口腔内で直接充填し、硬化させます。唾液のコントロールが難しい、体動が激しい、充填が難しい部位、大きな欠損には向きません。継ぎ足しができる材料なので、利便性の高い材料ですが、接着操作が確実にできないと予後が悪い技術依存性の高い修復です。
②CRインレー(コンポジットレジンインレー)
印象(型どり)をして模型上でコンポジットレジンで作製されるインレー(詰め物)です。保険診療の項目では存在しますが、診療報酬の設定があまりにも低く、私はこの修復を行っている歯科をほとんど見たことがありません。
③HJC(硬質レジンジャケット冠)
最近はCADAM冠の普及であまり行われなくなりましたが、欠損のない歯列においては、前歯(1,2,3番)、小臼歯(4,5番)に適応があり、前歯はCR,HKCでしか修復できません。両者とも強度が金属ほどないため、現状は金属の冠に硬質レジンを張り付けたHR(硬質レジン前装冠)が冠形態の修復はほとんどになっています。ちなみに、HRは唇側から白く見えるだけで、メタルフリーの修復物ではありません。
④CADCAM冠(キャドカム冠)
工場生産の硬質レジンのブロックをPC上でデザインし、ミリングマシンで削り出すものです。欠損のない歯列においては小臼歯(4,5番)下顎の第1大臼歯(6番)で可能となっています。工場生産のブロックのため、物性が理工学的に高い精度でコントロールされています。今後は、ほとんどの間接的に作成されるメタルフリー修復物はほとんどCADAMにより作成されると思います。
原田歯科でも、冠形態の修復物はCADCAM一番多く、院内でCADCAM冠をデザイン、ミリングする設備を備えているため破折などのトラブル時にも即日に対応できる体制になっています。
⑤HRBr(強硬度硬質レジンブリッジ)
今回の保険改定で導入されたものです。上下左右両側の第2大臼歯(7番)がある歯列において第2小臼歯(5番)欠損のみの場合、第1小臼歯(4番)、第1大臼歯(6番)を冠形態にしてブリッジによる欠損補綴を行う場合に認められました。
⑥グラスアイオノマー充填
昔からあるクラスアイオノマーセメントによる充填ですが、接着操作がCRほどシビアでないため、訪問診療、障害者診療、暫間修復などかなりの需要があります。最近のものは物性もよく、感水による物性の劣化も少ないため、最近特に見直されている修復です。セメント充填は、今でも発展途上国や歯科医療過疎地では主たる修復法です。
このように保険診療でも、かなりメタルフリー修復ができるようになってきていますが、前歯や臼歯部のインレー(詰め物)では認められていません。特にインレーなどにはCADCAMインレーは非常に良い適応があると思いますので、今後の導入が待たれます。
メタルフリー化は、審美的な優位性もありますが、現在保険診療で使用されている12%金銀パラジウム合金は、特にパラジウムの金属アレルギーの抗原リスクの高さや、触媒としての価格高騰などにより保険診療に使われる金属歯科材料としての役目は終わりつつあると思います。
今回の記事では、金属アレルギーのない患者様で補綴する部位以外欠損がない歯列での話になりましたが、金属アレルギーがあることが皮膚科などで診断された患者様の場合は、メタルフリー修復の適応がかなり広くなります。かかりつけの歯科医にぜひ相談してみるとよいと思います。
治療すればするほど、口の中が金属だらけなるのは、現在の健康志向とも矛盾しているように思います。