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OHAT(多職種用口腔ケアアセスメント)について
現在、肺炎は日本人の死因別死亡率で悪性新生物、心疾患、脳血管疾患に並び第3位になっています。肺炎というとインフルエンザや風邪症候群などによるものと思われがちですが、実際は70歳代では全体の70%、90歳以上では95%以上が誤嚥による肺炎とされています。
死因別の肺炎のほとんどが、誤嚥性肺炎によるものです。
これらの肺炎は、最近に汚染された唾液や食物を誤嚥することで起こります。原因としては、口腔衛生状態の悪化と嚥下機能、咳反射の低下などによります。
口腔ケアによって、誤嚥性肺炎の発症を有意に低下させることは様々な研究によって明らかにされていて、発症だけでなく重症化も防ぐことができます。また、歯科衛生士による専門的な口腔ケアによりインフルエンザの発症も1/10程度に抑えることができたという報告もあります。
口腔ケアの問題の一つは医療連携です。確かに、口腔内に存在する様々な歯科疾患や歯科的な問題は、日常的に口腔内を診ている歯科でないとなかなか正確に診断ができません。ケアに非協力な認知症の患者様、摂食嚥下に問題がある患者様であればなおさらです。
しかし、日常の入院患者様の口腔ケアを歯科医師や歯科衛生士が毎日すべておこうことは、ほぼ現実無理ですし、そうあるべきではありません。
やはり、患者様の口腔ケアは、実際患者様に一番近い場所にいる看護職、介護職などの先生方の協力なくしては全く成り立ちません。訪問歯科診療で、週に1度程度口腔ケアをするだけでなく、看護職、介護職などの先生方に毎日ある程度レベルの口腔ケアをしていることが誤嚥性肺炎を防ぐのにはとても必要なことです。
そのためには、看護職、介護職などの先生方に特化した口腔アセスメントが必要になります。看護職、介護職などの先生が、口腔内の状況を観察して各項目ごとに点数化し、評価をできる口腔アセスメント表(OHAT、Oral Health Assesument Tool)というものがあります。この口腔アセスメントは、直感的に口腔内を評価することができ、その評価の点数により、以下のメリットがあります。
①口腔アセスメントの均てん化
OHATで評価することで、どんな職種のどんな人が評価しても、比較的均一な評価結果を得られやすい。
②口腔ケアの個別化
OHATで口腔内の問題を把握することで、適切な歯科受診のタイミングがわかり、患者様の口腔の状態に合わせた標準化させた口腔ケアプロトコルの適用が行いやすくなります。
OHATのポイント
口腔ケア初日、ケア開始後から7日毎に実施します。スコアに応じて口腔ケアプロトコルも見直します。