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原田歯科医院

スペシャルニーズ歯科(障がい者歯科)・歯科訪問診療

ゆりかごから墓場まで、安心してかかれる歯科医療を提供します

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口腔ケアとは何か?

現在では、口腔ケアは、摂食嚥下機能を高める手法の一つとして、注目されていますが、もともとは、そのような意図で行われたものではありませんでした。

たまたま、歯などをほとんどみがくことも、みがいてもらうこともない老人の入院患者たちの口腔ケアをしたところ、たまたま、「最近、どういうわけか、発熱する患者が少なくなった。」と、看護師が歯科医に話したことから始まります。

口腔ケアをした歯科医は、その話を聞いてはじめて、「もしかして」という思いをめぐらせたそうです。

その後、いろいろな調査を通して、口腔内を清潔にしたり、刺激することが、「口からものを食べる機能を高めている」ようだということが分かってきました。また、それに特化した口腔ケア(機能的口腔ケア)も少しずつ行われるようになってきました。

ただ、そういった歯科の調査結果が、内向きの方向にしか報告されなかったこともあり、口腔ケアに対する他職種の方の評価はいまひとつという感じがあります。

また逆に、極端な成功例のみをとりあげて、あたかもそれが口腔ケアをしたおかげだなどという取り上げ方をする人たちやマスコミなども、現場にたずさわる方たちには、迷惑な存在です。
胡散臭いと思われても仕方のない面もあります。

口腔ケア自体は、特殊な技術や知識はいりません。
基本的な手技は、マニュアル化されており、摂食、嚥下に関する基本的な知識があれば、安全に行うことができます。
あと大切なことは、口腔ケアをしやすい環境を作ってから、ケアをすることです。

器具や用具はもちろんですが、ケアに適した体位、ケアを行う方の姿勢、照明の確保などは実は大切なことです。見えれば簡単なことも、よく見えない上に、不自然な姿勢でケアをしてしまうととても難しく感じてしまいます。時間がかかる上に、疲れて、きちんとできません。すぐに、口腔ケアなどやめたくなってしまうでしょう。

コストも大切な問題です。
少し工夫すると、そういう環境は、身の周りにあるもので、費用をかけずに作ることができます。また、器具や用具なども、購入ルートを研究すれば、かなりコストを抑えられると思います。
口腔ケアとは?
口腔内のバイオフィルムを機械的にこすりとること。
歯、歯肉、頬粘膜、口腔前庭、舌、口蓋、舌下など口腔内全体の機械的な清掃をさします。その導入として、行われるフェイスマッサージ、唾液腺マッサージなども含むこともあります。
機械的という意味は、ブラシなどを当てて、こすりとるということです。イソジンなどでうがいをすることなどと区別するための言い回しだと思ってください。

バイオフィルム
さまざまな細菌が凝集して、ぬめりのような状態になったもので、薬剤に対して、より抵抗性を持ちます。機械的に除去しないと取れません。

もともとの口腔ケアは、口腔内を清潔にすることで、
①   虫歯や歯周炎の予防
②   口臭の減少

を目的に行われていました。最近では、それにとどまらず
③発熱、肺炎の予防
④摂食、嚥下機能を高める(舌圧の上昇、嚥下反射の惹起されるまでの時間の短縮)
⑤栄養状態(血清アルブミン値)、ADLの向上

などを目的としておこなわれることが多いようです。

口腔ケアの分類

1)器質的口腔ケア
単純に、口腔内のバイオフィルムを除去して、口腔内を清潔に保つことをいいます。ただし、器質的な口腔ケアは、次に出てくる機能的口腔ケアの一部となります。

さまざまな口腔ケアに関する調査結果を、列挙してみたいと思います。

①器質的口腔ケア(以下口腔ケアと呼びます)を行った被験者では、口腔内だけでなく、咽頭の細菌数が減っていた。
イソジンによるうがいでは、咽頭における細菌の減少が起こらなかった。

補足 高齢者の肺炎の原因と発症について
嚥下反射とせき反射の低下が主な原因
それにより、唾液や逆流した胃内容物を夜間、下気道に吸引してしまう

②口腔ケアの効果の効果に関する調査
全国11箇所で、2年間の追跡調査(平成9-11年、東北大医学部佐々木英忠、呼吸不全の研究))、

口腔ケア介入群(180名程度)
週1回歯科衛生士による、専門的口腔ケアと日常の口腔ケア(歯科衛生士による集団指導あり)

対象群(同じく180名程度)
今までどおりのやり方を、2年間変えない

結果として、口腔ケア介入群に関しては、発熱発生率が半減した。
肺炎発症率は、19%から11%へ低下した。
スポンジブラシで、口腔内を清掃した程度の無歯顎者も同様の結果がもたらされた。
認知度の低下(MMS(Mini Mental State Examination)による簡易的な評価)が、有意に少なかった。
ADLも有意にはいたらなかったが、低下しにくい傾向があった。

その他の調査から、
③栄養不良者に栄養を付加する群と、栄養を付加し、口腔ケアを行う群に分け舌圧と血清アルブミン値を、4ヶ月に比較したところ、後者のみ、舌圧と血清アルブミン値が上昇した。前者では、両者ともに減少した。
④口腔ケアを行うと、嚥下反射の惹起されるまでの時間の短縮と唾液中のサブスタンスP濃度の上昇が有意に認められた。
など、いろいろ調査結果があります。

これらのことから、
器質的口腔ケアは、バイオフィルムの除去が本来の目的ですが、そのことよりも、口腔内をケアする行為が、なんらかの刺激となり、本来目的としていなかった摂食や嚥下機能の向上をもたらしたのではないか。
そのことにより、栄養状態が向上して、ドミノ的に、全身状態の改善が見られたのではないか。と考えられるようになりました。

2)機能的口腔ケア
器質的口腔ケアが、結果として、摂食、嚥下に関する口腔機能を高めていた点に注目して、「口から食べる」機能を高めるために特化した口腔ケアのこと。
口腔リハビリテーションともいいます。今回は、取り扱いません。

口腔ケアの手法、進め方

実際は、いきなり口腔ケアをやるのではなく、当院の場合、初診に、まず患者様の全身状態を把握し、食事の内容、摂食、嚥下の機能評価を行います。
また、口腔内の状態も、細かく診査します。

口の中は、普段介護されている方でも、きちんと把握できている方は少ないと思います。
その上で、どのような口腔ケアが必要か、歯科治療が必要か事前評価をします。
これらの情報を、収集、分析して口腔ケアアセスメント票を作成します。
口腔ケアアセスメント票は、ケアにかかわるすべての方が、その患者様の摂食、嚥下機能、必要とされる口腔ケアの内容を視覚的に簡便にわかるようにしてあります。

口腔アセスメントなしで、口腔ケアを行うことは、基本的にはありえません。
アセスメントができれば、後はケアに入りますが、実際、計画したとおりケアができるか、まず当院では、歯科衛生士が、実際の患者様で、ケアを担当される方と一緒に、デモンストレーションを行います。
そこで、問題点が浮かび上がることがあれば、修正していきます。
そのような、試行錯誤の末、最終的なケアの流れができていきます。

実際は、さまざまな患者様がいらっしゃり、それぞれのケース別のマニュアルはあるのですが、今回は誰もがやりにくいと思われるケースを取り上げてみたいと思います。
このケースには、一通りの手法が織り込まれています。

あとは、それぞれの手法の組み合わせなので、原田歯科では、「口腔ケア早わかりフローチャート」を作成して、介助される方が、簡単にケアの流れを組み立てられるようにしてあります。

モデルケース
口腔内乾燥あり
うがいできない、すぐむせる
発熱、肺炎の既往あり
なかなか開口してくれない
残存歯あり
使用中の義歯あり

の患者様の場合(一番ケアが難しいと思われるケースです)

器質的な口腔ケアをまず先にやります。機能的な口腔ケアをやる場合は、器質的なケアが終わり、口腔内が清潔な状態で行います。
口腔ケアに抵抗を示す場合は、いきなり口に触ってはいけません。

これから何をするか、声かけをしながら、リラックスをうながしていきます。
体位は、ベッドアップ30度、頸部前屈が推奨されます。
この姿勢が、一番誤嚥を起こしにくく、かつ口腔内を見渡しやすいため、安全にケアを行えます。
ヘッドレストがないと、ケアをやる側、受ける側も疲れますので、自力で歯みがきができない方には、口腔ケア用に、市販の安いアウトドア用などのリクライニングチェアーを用意すると良いでしょう。

も用意します。枕の両端に、ゴムを取り付けると、ケアされる方に合わせて枕の位置がかえられます。
まさに、リラックスしてマッサージをうける感覚をイメージしてください。

片麻痺のある方は、健側を下にして、横を向いていただきます。
うがいができない、誤嚥しやすい方は、こまめに吸引が必要ですので、吸引器は必ず用意しましょう。
寝かせることで、口腔内に明かりが入りやすくなり、視野が確保しやすくなります。
見えていないものは良く磨けません。ライトは、学習用のデスクスタンドでも可能です。

用意ができたら、ケアに入ります。
これから行うことを語りかけながら行います。

肩、首のマッサージを行います。
全身の緊張をほぐしていきます。

フェイスマッサージ

唾液の出が悪い方、口をあけてくれない方は、フェイスマッサージをしっかりやると良いでしょう。口の周囲の筋肉が緩み、開口しやすくなります。唾液の分泌も良くなります。

解説 フェイスマッサージ
口から遠い順に、耳下腺、顎下腺、舌下腺周囲の順にマッサージをやっていきます。緊張が和らいできたら、口唇周囲をマッサージ。筋肉の緊張を和らげ、開口をしやすくなります。唾液の分泌を促し、ケアに伴う痛みを和らげます。
とくに、唾液腺マッサージが有効ですので、念入りにやりましょう。

口腔内に指をいれるときは、グローブの装着を推奨します。
また、指をかまれないように、器具を持っていない側の指に、指ガードを使用すると、安全ですし、簡単に、開口を維持できます。

必要があれば、パルスオキシメーターを装着して、口腔ケア時の、呼吸の状態(痰の絡み)などを観察しましょう。95%以上になっているか、確認しながらケアを進めてください。

口腔内のケアに入ります。
まず、入れ歯をはずします。

入れ歯のはずし方。

部分入れ歯の場合
入れ歯本体を引っ張ってはいけません。
ばね(クラスプ)を、かかっている歯を押さえながら、はずすと良いでしょう。ばね自体に、外れる方向が決まっているので、それが分かれば、かんたんにはずせます。上下ある場合、外れやすいほうから、先にはずしましょう。

総入れ歯の場合
入れ歯のヘリに、指を入れていくと、空気が入りすっと外れます。普通は,下からはずします。
入れる場合は、逆の動作を行います。
大きい義歯の場合、開口させて、指で口角を引っ張るようにしてしまうと、指の厚み分で、義歯が入れにくくなったり、痛がるので、歯ブラシの柄など薄いもので、口角を引っ張り、かつ少し口は閉じ気味にすると、簡単に入ります。口角が切れやすい方は、あらかじめワセリンを塗っておくとよいでしょう。

歯を磨くとき、寝るときは、必ず入れ歯をはずします。寝ているときは、入れ歯の洗浄剤につけておくと、カンジダなどの繁殖を抑えられます。金属がないものは、ピューラックスを薄めたものが、経済的かつ効果的です。(480倍希釈)
金属があるものは、さびの問題があるので、市販のものが無難です。

カンジダが増えると、理由は解明されていないが、口腔内の悪玉菌(MRSA、歯周病菌(嫌気性桿菌など))が増えることがわかっています。

唾液の出が悪い方には、あらかじめ、口腔内に保湿剤を塗っておきます。

口腔内の汚れを取っていきます。(吸引クルリーナ、吸引ブラシ使用)
食物残渣を、吸引クルリーナでからめとります。
その際に、残渣を、奥へ押し込まないように気をつけましょう。

歯は、吸引歯ブラシで磨きます。
歯を磨くときは、大きく開口させてはいけません。歯列の外側をみがくときは、開口していなくともまったく問題ありません。むしろ、閉じていただいたほうが、楽にできます。舌側をみがくときも、2横指開口できれば、十分です。

ケアの協力度が低い方の場合、咬まれることを防ぐため、指ガードを使用する良いでしょう。

柔らかい歯ブラシ(超軟毛)を使用しましょう。痛みがなければ、患者様も協力的になっていただけます。歯ブラシを使う時点で、吸引クルリーナで、ほとんどの残渣が取れていないとだめです。
歯みがきの動きは、軽く歯に当て、ゆする感じ。力が入りすぎる方は、指3本で、つまむように握りましょう。
協力度が低い患者様の場合は、1人でやると時間がかかりますし、視野も取りにくいので、理想は、2人1組で進めていく方が効率は上がるとおもいます。

舌の清掃
ぬれた状態で行います。
ぬれていない方は、保湿剤を使うと良いでしょう。
舌ブラシ、超軟毛歯ブラシ、クルリーナなどあるが、やはり、舌ブラシが一番やりやすいと思いますが、状況に応じて判断してください。
10こすり程度にします。物足りない気がするかもしれませんが、毎日やることで、舌苔は必ず減ってきます。逆に、やりすぎると、角化傾向が強まり、舌苔がふえてしまいます。

入れ歯を入れていないと、舌の肥大が起こりやすくなります。入れ歯を入れることで、舌圧があがるため、口腔内に残渣が残りにくくなります。

歯間ブラシ
歯がそろっている方は、歯間ブラシをやりましょう。歯間ブラシをやると、格段に口の中の汚れが取れます。歯間ブラシがつかえると、口腔内の雰囲気が変わってきます。ぜひトライしてみてください。

うがい
本当は、用具をかえるごとに、3回ずつうがい(ブクブクうがい)ができる良いのですが、現在は無理でも、先々、口腔機能が上がり、うがいができるようなったら、ぜひ取り入れてください。

口腔内の清掃は、以上です。

入れ歯の清掃

注意点
落として割ることが多いので、下に洗面器を置いて行いましょう。
入れ歯専用の歯ブラシをなるべく使いましょう。
歯みがきペーストを使うと、入れ歯に細かい傷ができ、汚れがつきやすくなるので、使いません。
着色がひどいようなら、入れ歯を傷つけずに着色を落とす薬品があります。簡単に15分程度で、ピカピカになりますので、歯科に依頼してください。

入れ歯安定剤について
使わないで、ものが食べられるなら使わないようにします。
慣れている入れ歯なら、外れやすくとも、かなりのものが食べられます。傍目に、ゆるくみえても、むせずに食べられていれば問題ありません。
安定剤をつける場合も最小限の量を使用するようにします。いればの中央部には塗らないようにします。(うきやすくなるため)

ふりかけのもの(ファストン)の使い方
まず入れ歯をよくぬらします。少なめに、全体に薄く降りかけて、口腔内に入れ、1分ぐらいかんだままにする。はずします。あふれているものは、ティッシュなどでふき取りましょう。何回かやると、適量が分かるので、覚えます。

入れ歯がゆるすぎると、安定剤をつけても、食事中はずれてしまうと思いますので、歯科に依頼してください。

大まかなケアの流れを書きましたが、ケアを完璧にやることよりも、日常的に口腔内を刺激していくという姿勢が大切だと思います。
そのことによって食べる機能が急激に落ちていくのを防ぐことができます。

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