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胃ろうの方に入れ歯は必要か?
さまざまな理由で、口の中にあるものを、のみこむことができず(誤嚥)、肺のほうへ吸入してしまい、肺炎を起こしてしまう方が多くいます。高齢者の死亡原因で、肺炎が多いのは風邪を引いたためではなく、誤嚥による肺炎がほとんどです。
そのような方は、口からものを食べることが死に直結するため、胃にじかに栄養を送り込む経路である胃ろうを作ります。.
ただし、口の中が汚れていれば、汚染された唾液を誤嚥することもあるため、必ず、誤嚥による肺炎を防げるということはありません。
胃ろうの方は、通常はおなかにあけた管から、経腸的に栄養を取るのですが、一部の方は、摂食、嚥下療法を行い、口からものを食べるトレーニングをします。
はじめは、とろみ、温度などを調整してのみこみやすいものから始めますが、少しずつミキサー食、きざみ食などと言う風にかむ要素の割合をふやしていきます。
ものをのみこむという動作は、それ単体では非常にむせをおこしやすいものです。
食べ物の見て、匂いをかぎ、口に運び、味わい、よくかむという段取り(準備)を踏むことで、のみこみ(嚥下)時のむせがかなり減ります。
医療者が、口から食べることにこだわるのは、
1)食べる行為自体が五感を刺激し、意識を覚醒する。
2)かむ筋肉を使うことで、口を閉じる機能が増し、口腔内の乾燥を防ぐこともできます。
3)唾液の量が増え、口の中が感染に対して、抵抗性を持つ。
4)ものをかむことで、脳への血流量が増え、脳の活動性が高まる。
5)食べる楽しみ、生きる意欲を高める。
などがあるからでしょう。
入れ歯が使いこなせる、もしくは自分の歯でかむことができる方は、食べ物をよくかみ、味わい、細かく砕くという準備をして、のみこみに備えることができます。
そのステップを省略して、いきなりミキサー食でのみこむことと、食べ物をよくかみ、味わい、細かく噛み砕いてから徐々にのみ込むことは、全く違う行為です。
四季折々の食材を、よくかみ、味わい食べることは、さらに五感を刺激し、食への意欲をかきたて、栄養状態をよくし、全身のコンディションをより高く保ちます。
また、口からものを食べない方の場合でも、
1)入れ歯があることで、かみしめの動作が反復して行いやすくなり、意識の覚醒、「ぽかん口」(かむ筋肉が衰えることで、常に口が開いたままになること)の防止になります。
口が開いたままだと、どうしても口呼吸になりやすく、口腔内、気道の乾燥が起こりやすいため、感染を起こしやすくなります。
2)発音が明瞭になり、周囲とのコミュニケーションが取りやすくなる。
3)表情が豊かに見え、周囲の人や自分に対する関心を高める。
などといった利点があります。
ただし、嚥下機能が落ちた方の場合、入れ歯の取り扱いには充分な配慮が欠かせません。
食事の都度入れ歯ははずして、歯みがきをする、寝るときは入れ歯ははずすなどといった常識的な手入れができないと、かえって危険を伴います。
現在は、在宅医療に熱心な歯科医も増えてきていますので、寝たきりや嚥下などに問題のある方は、定期的に、歯科医に口腔内を診察してもらうとよいとおもいます。
経験的に、口の中は、意外と家族や介護している方でも、見えていない場合が多いので、問題点がある場合が多いと思います。