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原田歯科医院

スペシャルニーズ歯科(障がい者歯科)・歯科訪問診療

ゆりかごから墓場まで、安心してかかれる歯科医療を提供します

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歯科に多いシェーグレン症候群(SjS)

シェーグレン症候群(SjS)は、歯科にかかられている患者様に非常に多く診られる膠原病です。膠原病とは、なんらかの自己免疫反応が生じた結果、全身に分布している結合組織を中心に炎症が起こり、多臓器に障害が現れる疾患の総称です。

SjSは、30から50歳代の女性に多く口腔乾燥を起こしやすいために虫歯が非常にできやすく、歯科的なケアがなされないと短期間のうちに大半の歯を失ってしまいます。その他の好発症状としては、眼の異物感、発赤充血、疲れ眼などの乾燥性角膜炎、耳下腺の腫脹などがあります。そのほかに関節痛などを伴う場合があります。

血液検査では、貧血、赤沈↑、γーグロブリン↑、白血球や血小板数の減少、リウマトイド因子(RF)が(+)、抗SS-A抗体、抗SS-B抗体(+)などがみられます。基本的に、唾液腺や涙腺などの外分泌腺の炎症により腺房が破壊され、唾液や涙液の分泌が低下するため乾燥症状が起こります。実は、SjSの発症にはEBVなどのウイルス関与が考えられ、実際HIVなどのレトロウイルス感染者にもSjSと同じような乾燥症状を見ることができます。

SjSには、他の膠原病を随伴しない原発性のものと、合併する続発性のものがあります。合併しやすい膠原病としては①関節リウマチ(RA)、②全身性エリトマトーデス(SLE)③強皮症(SSc)④多発性筋炎、皮膚炎(PM/DM)⑤混合性結合組織病(MCTD)などが知られています。

SjSは、口腔と眼の乾燥などの腺症状が所たる症状ですが、原発性SjSの3割の患者様に全身症状である腺外症状が出てきます。腺外症状としては、①リンパ節の腫脹②環状紅斑③慢性の甲状腺炎(比較的高頻度)④肝質性の肺炎⑤関節炎⑥原発性胆汁性肝硬変(PBC)自己免疫性肝炎(AIH)⑦肝質性腎炎⑧クリオグロブリン血症に伴い下肢に紫斑⑨レイノー現象(手や足の細動脈が発作性に収縮することにより皮膚の色が正常→白→紫→赤→正常という風に変化すること。)など多彩な症状が出てきます。

SjSの診断は、以下の4項目のうち2項目が当てはまればSjSと診断されます。

①病理組織検査  口唇腺、涙腺生検によるリンパ球浸潤

②口腔検査     唾液腺造影(唾液腺シンチグラフィー)での異常所見または、唾液分泌量の低下(ガムテスト、サクソン試験)

③眼科検査     シルマー試験(涙分泌能の検査)かつ、ローズベンガル試験または蛍光色素試験で陽性

④血清検査     自己抗体(抗SS-A、または抗SS-B抗体)陽性

①の口唇腺の生検、②のガムテスト、④は歯科で日常的に行えると思いますが、患者様の負担を考えると歯科では②のガムテストと④の血液検査で充分診断が付くと思います。後は、眼科と連携して眼科検査と眼科的なケアをお願いすることになります。

腺症状だけであれば、口腔と眼の乾燥症状に対しては対症療法のみとなります。口腔乾燥に対しては、人工唾液(サリベート)や唾液分泌刺激剤(塩酸セビメリンなど)が処方されますが、実際は、それらの副作用や患者様の使用感を満足させられないなどの理由で、こまめにうがいをして口腔内を乾燥させないなどの対応をしている方が多いように思われます。ただ、さまざまな免疫物質を含んだ唾液と水ではやはり口腔内の感染症(虫歯、歯周炎、カンジダ症)に対する抑制効果に明らかに差があります。口腔乾燥自体は、死に直結することはありませんが非常に患者様のQOLを低下させます。私たち歯科医が、SjSの患者様に漫然と虫歯の治療をし続けるような対応をしていると、短期間のうちにほとんどの歯が処置歯になり、その処置歯がまた虫歯になりの繰り返しで結局は少しずつ歯がなくなってしまいます。そうすると、咀嚼の機能が落ち、そのことでさらに唾液の分泌能が低下していきます。

こういった対応は、決して患者様のために何のメリットもありません。確かに歯科治療も必要ですが、乾燥の程度に応じて、患者様の生活リズムのなかで受け入れやすい、口腔内の保湿方法、虫歯の予防のための口腔ケアの手法、歯みがき剤の選択、器具のアドバイス、口腔乾燥に随伴する不快事項の対応を一緒に考えていくことがとても大切なように思います。SjSの患者様は、治療法がないことと、腺症状だけの場合、歯科、眼科以外の絡みが少ないため内科などでは診断と処方のみで、充分なケアがされず、放置されている患者様が多いような気がします。

SjSの患者様は、まず多発性の虫歯治療で歯科にかかっていることが多いので、歯科医が口腔乾燥を伴い虫歯が多い患者様には早く診断をつけて、歯科治療だけでなく口腔ケア指導もしっかり行っていくべきです。また腺外症状を持つ患者様の場合、ステロイドや免疫抑制剤を処方されていることがあるため、他科と情報を共有して歯科で観血的な処置、手術をする場合は充分全身状態を把握しておかなければなりません。

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