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摂食嚥下の訓練法について
原田歯科では、摂食嚥下機能の低下が疑われる患者様には、
①事前に、患者様の情報、全身状態の聞き取り(現病歴、既往歴、服薬状況、ADL,IADLなど)、機能評価、口腔の診察、機能評価、摂食嚥下、食事に関する聞きとり、ご希望などをうかがいます。そこで、口腔ケアアセスメント、摂食嚥下機能アセスメントを作成します。
これらに関しては、原田歯科では、すでにアンケート式の問診、評価票を作成しており、おおよそ60-70項目に関してチェックをしています。
②その後、診察を行い、スクリーニングテスト(RSST,MWST,FT,CT)を行います。
だいたい、口から食事がしにくくなった方、もしくは経管栄養になった方で、経管、経口摂取している方、経管栄養のみの患者様が対象なのですが、今回は現状経口摂取している方を例にしてみます。
ます、食事の際にしっかり覚醒している状態にしていただき、誤嚥を起こしにくい食事環境(食事をする場所、机の高さ、イスの形状、食器、食具、食事の際の姿勢(前屈で食べたほうが誤嚥しにくい)、介助者の位置、一口量、などを工夫することででどれくらい誤嚥や、むせが減るかチェックします。いきなり、今までの食形態を落とすことは明らかに誤嚥している場合を除いて行いません。
その後、摂食嚥下の機能訓練を行いますが、これには
①間接訓練 安全な嚥下を行うために、食物を使わずに行う訓練
②直接訓練 安全な嚥下ができると判断したときに、食物を嚥下させることにより嚥下機能を改善させる訓練
に分かれます。今回は、①嚥下反射が起こりにくい、②嚥下反射による運動が不十分による咽頭期における間接訓練のうち、開口訓練とシャキア(Shaker)訓練を紹介したいと思います。これらは、いわゆる嚥下にかかわる舌骨上筋群の筋トレです。自分で訓練が行える方には、効果が高いように思います。
①開口訓練
口を最大限にして10秒保持する、これを1日10回行う。
訓練を実施した患者様に嚥下反射惹起、舌骨挙上量、咽頭通過時間、咽頭残留、誤嚥などに改善が見られたということです。
②頭部挙上訓練(Shaker法)
寝た状態で、肩を床につけ、頭を足の指が見えるまで挙上します。
これを、1分間持続的に行い、1分間の休憩を3回繰り返しその後、30回の上下運動を行う。
これを1セットとして、1日3セット行います。6週間継続。
Shaker法は、はじめはきついようですが少しずつはじめていただけると取り組みやすいようです。これらの訓練は、最近食事の時にものがつかえやすい方にも有効だと思いますが、その背後には腫瘍、解剖的な形態など別の問題が隠れていることがあるので、それらの検査を受けて問題がなく、やはり嚥下機能が落ちているという方には有効だと思います。
これは、言うまでもないことですが、口腔ケアは必ず行うことが前提です。口腔ケアを行わないで嚥下機能を改善しようとすることは、とても危険でかえって誤嚥性肺炎を起こす引き金になることがあります。
口腔ケアは、安全のために必ず歯科で口腔の状態を診察してもらい、歯科医師、歯科衛生士の指導の下行うようにしてください。