ヘルペス性歯肉口内炎について
ヘルペス性歯肉口内炎は、通常、1型単純ヘルペス(HSV-1)の初感染により発症します。
風邪を引いたような症状に続き、口の中にぴりぴりとした痛みを感じるようになり、小さな水疱ができます。
水疱は、すぐにつぶれ、びらんを形成し口臭、周囲のリンパ節の腫れと強い痛みが出てきます。
子供に発症すると、口唇や前歯部の歯肉にかなり強い症状が出ますが、大人の場合は、比較的軽症なものが多く口蓋や舌、歯肉などさまざまな部位にできます。
かなり、痛みが強い場合が多いため、食事がかなり摂りにくくなりますので、食べられるもの、食べやすいものを積極的にとり、体力を落とさないようにします。
症状が治まるのに1-2週間かかります。
歯科医であれば、診ればすぐに診断はつくと思いますが、本来はウイルスの同定、抗対価の上昇などにより確定診断をします。
たまに、手足口病、帯状疱疹の前駆症状、ヘルパンギーナのことがあります。
治療はアクシロビルなどの抗ウイルス薬を服用または軟膏(ゾビラックスクリームなど)を塗布することにより、快方に向かいます。
水疱がつぶれる前のステージのものには良く効きますが、いったんびらんになってしまうとその部位に関しては、治癒は大して早くなりません。
痛みに関しては、アセトアミノフェンを使用します。
非ステロイド系の消炎鎮痛剤は、感染を拡大する傾向があるので、使用しません。
同様の理由で、ステロイド系の軟膏も出しません。
ただ、患者様が歯科を受診するのは、びらんを形成してからのことが多いので、アクシロビルなどは、感染が拡大しないように、症状が早く取れるようにとの意味合いで処方しているのが現実です。2、3日程度、症状が取れるのが早くなります。
ウイルス自体は、根絶することはないので、体力が落ちたときなどをきっかけに再度、ウイルスの活動が活発になり、同じ症状が出ることがあります。
患者様に特に気をつけていただきたいのは、通常の口内炎だと思いケナログやアフタゾロンなどといったステロイドの軟膏を塗布してしまったり、痛みを止めるためにロキソニン、ボルタレンなどの非ステロイド系の鎮痛薬を服用してしまうと感染が増悪し、お口の中が広汎に水疱、びらんが形成されてしまいます。
小さな水疱が複数でき、すぐにつぶれ、びらん(口内炎)になるようでしたら、ウイルス性のもののことが多いので、速やかに歯科を受診したほうがよいと思います。
唾液などを介して、接触、飛沫感染します。
大人の場合、ご自分が発症しているときは、お子様やお孫さんには濃厚な接触はしないようにいたほうがよいと思います。
余談ですが、以前は口腔内のヘルペスは1型のものがほとんどでしたが、2型ヘルペス(性器ヘルペス)によるものが増えてきています。
これは、STD(性行為感染症)に分類されるもので、性的接触から発症までは、2-3日から1週間程度かかります。