3DS(虫歯菌の除菌)について
虫歯の治療は、虫歯になった部位を取り除き、人工のものに置き換えることです。
当然のことですが、同じ歯に何度も治療を繰り返してしまうと、本来の自分の歯の部分の比率が少なくなります。そして、より少ない部分に、過大な力がかかることで、歯の寿命は短くなっていきます。
虫歯を治すことも大切ですが、虫歯にならない口腔(旧来の言い方では、虫歯になりにくい体質)にできたら、なおさらよいと思います。
虫歯は、ミュータンスレンサ球菌、乳酸桿菌などによる感染症です。これらの菌が少なくなれば、当然虫歯になるリスクも低くなります。
ミュータンスレンサ球菌は、歯の表面に特異的につく性質があるため、その性質を利用して、虫歯菌の少ない口腔内の細菌叢を得ることができます。
それが、3DS(Dental Drug Delivery System)です。
この処置は、予防歯科では、有効性の高さが認められていますが、予防に関する部分については、社会保険では給付されないため自由診療になってしまいます。
費用は、初回は
検査代(診査、問診、判断料を含む) 1回につき6000円
リテーナー(上下、1組分) 10,000円
(リテーナーは、大きく口腔内の状態が変わらなければ、何度も使えます。また、片顎しか歯がない方は、5000円になります。)
お薬代 3000円
(院内で使う抗菌剤、ホームケア用の薬剤を含む)
PMTC代 2500-7500円
上下の歯の3DS法は総額で、21500-26500円となります。
2回目以降の3DSは、検査代、お薬代、PMTC代のみとなります。
リテーナーは、3DSのとき以外にも、虫歯予防のホームケアに使えます。
3DSは、次のような方に対して、高い効果があります。
① 虫歯を治療しても、短いサイクルで新たな虫歯ができてしまう方。
② これから、お子様を持とうとされる方。
③ 歯周炎などにより、歯と歯の間など、物が詰まりやすくなっている方。
④ 矯正治療を受けられている方。
⑤ 虫歯の治療を多く受けてきた方。
⑥ 歯みがきを頻繁にしているのに、虫歯になってしまう方。
3DSの流れ
はじめに、唾液検査をして、総レンサ球菌、ミュータンスレンサ球菌、乳酸桿菌の定量的な測定をします。
実際、虫歯菌の比率が高い場合に、3DSの適応となります。そうでない場合は、プラークコントロールのみで、対応します。
衛生士に、患者様にあった正しいブラッシング法を教わり、実行していただきます。
これは、必ずやっていただかないと、良い結果は得られません。
通常は、虫歯のない状態(もしくは、治療後)の時に3DSは行います。虫歯がある状態で行うと、3DSをしても、ミュータンス菌が、除菌できません。
① ミュータンスレンサ球菌は歯の表面に、バイオフィルムという膜の状態で付着しているので、まずこの膜をPMTC(衛生士などによる機械的な歯の清掃)により、除去します。
②その直後に、あらかじめ作成しておいたマウスピース(ドラッグリテーナー)に、抗菌薬を注入して、5分間作用させます。
③当日からは、ミュータンス菌の再感染を防ぐため、新品の歯ブラシを使用し、砂糖類の摂取もなるべく控えます。
④その後は、1週間ほど、ご自宅でフッ素の薬液を使用して、菌の再付着を防ぎます。
こうすることで、3-6ヶ月程度は、ミュータンスレンサ球菌の少ないバイオフィルムが維持されます。
その後は、3-6ヶ月ごとに定期的に検査をし、虫歯になりにくい状態が維持できているか確認していきます。
こうすることで、虫歯になる可能性を有意に防ぐことができます。