八王子にある歯医者さん 原田歯科医院

ホーム 各種治療紹介 障害者診療 - プラザキサを服用されている方の抜歯

プラザキサを服用されている方の抜歯

心房細動による血栓症を予防するために、いままではワーファリンという抗凝固薬が使用されていましたが、最近プラザキサという直接トロンビン阻害薬の処方にシフトされている患者様が少しずつ増えています。ワーファリンは、ビタミンK拮抗作用による凝固因子産出抑制によるもので作用発現は遅く、半減期は36時間と長めになっています。ビタミンKを多量に含む納豆などを食べると効果が落ちてしまうため、食事の制限があったり、定期的にPT-INRなどを測定しなければいけないため色々と制限の多い薬です。

プラザキサは、食事の影響を受けにくく、半減期は12時間となっています。そのため、食事の制限や採血などの生活の質を大切に考えるとよい薬のように思えますし、半減期が短いということは、手術などの出血を伴う際の休薬期間が短くて済むこと、出血があった場合服用のタイミングをずらすことで出血を止められる可能性があります。
ただこの薬、よいことだらけではありません。いくつかの問題点があります。

①半減期が短いということは、服用か回数が多くなり、1日2回の服用になっています。のみ忘れなどのトラブルが多そうです。ちなみに、ワーファリンは1日1回です。

②中和薬がない。出血を止めるためには、休薬、Ⅱ因子補充、透析、胃洗浄など簡単にはいかない。結構大変。

②血中濃度のピーク値とトラフ値が、12時間毎に繰り返し出てくることで、たとえば抜歯などの観血処置をする場合のタイミングを誤るとピーク値の出血傾向をもろにかぶることになります。トラフ値とは、最低血中薬物濃度のことです。プラザキサの場合、次の薬を飲む直前の血中濃度のことになります。

③ワーファリンの場合、長期に使用されており服用継続下の抜歯の経験も多く、その際の指標としてPT-INR(プロトロンビン時間国際標準比)3.0以下であれば問題ないであろうというガイドラインもできています。また、PT-INRは簡便な測定機器(コアグチェックなど)があり、一般の歯科開業医でも採血器具があり(末梢血でもOKですがやや面倒)、測定機器があればその場で測定することができます。しかし、プラザキサはおそらくaPTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)が指標になるであろうとされていますがまだ日本では抜歯などに関してガイドラインなども作られていません。aPTTとは、異物との接触により起こる凝固反応を反映したものであり、基準値はおおよそ30秒程度です。aPTTが80秒を超えると大出血を起こす危険域とされています。この薬(プラザキサ)は、PT-INRはあまり数値が上がってきません。最近の当院の患者様で測定したときも、服用後4時間後ぐらいでaPTTが60秒、PT-INRが1.3程度でした。

大雑把な説明ですが、PT-INRは、外因性(外傷などにより血管から放出された組織因子を基点とする血液凝固)を反映する数値で、検査試薬による数値のばらつきを補正したもので基準値はおおよそ0.85-1.15あたりです。aPTTは、内因性(血管内皮細胞以外との接触を基点とする血液凝固)を反映する数値です。

そのようなことから、プラザキサを服用されている方の抜歯などを行う際に確認して行わないといけないことは、

①処方医の先生と連携し、aPTTのピーク値とトラフ値を確認しておく。自院で測定できればベスト。

②トラフ値に近い時間帯(たとえば服用後10時間後)に合わせて抜歯等を行う。この薬は服用後2-4時間でピーク値になるようなのでその時間帯の再出血に注意する。患者様、処方医、歯科医の3者の連携を密にしておく。

③基本的に適正な治療域でコントロールされている患者様の場合、服用は続けたまま抜歯、白内障手術などの手術は行う。

などとされていますが、日本の各科の専門家の先生が意見を交えてワーファリンの様なガイドラインをなるべく早く作成して頂くことが急がれます。