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胃ろうの方の口腔ケア

高齢になると、ものをのみこむ能力(嚥下機能)が徐々に低くなります。ものをのみ込むということは、口の中のものを肺ではなく、食道、胃に送り込むことです。通常は健康な方だと、まちがって食べ物を肺に吸入してしまいそうになると反射としてむせが起こり、吸入を阻止します。ところが、嚥下機能が低くなった方は、食べ物を飲み込みタイミングが遅れやすくなることがあり、誤って肺に吸入してしまうことが多くなります。ところが、このような方はむせが起こりにくくなっているためそのまま肺に食べ物などを吸入してしまい、肺炎を起こしていきます。はじめは、たびたび発熱を起こし、そのうち誤嚥性肺炎を起こします。このようなかたは、口からものを食べると肺炎を起こしてしまうために胃に穴を開けて胃ろうという栄養を摂る管を作ります。(PEGといいいます。)

諸外国に比べ、認知症の患者様にPEGが安易に行われているとか、認知症の方は口から食べれなくなったら、自然死を選択すべきだとの報道もありましたが、日本独特の死生観や医療制度の問題もあると思いますので、情報公開が進んでいけばおのずとあるべき姿に進んでいくと思われます。

胃ろうをつくるともう誤嚥性肺炎を起こさないかと思われますが、誤嚥を起こすタイミングが減っているだけで、口からものを食べなくなることで、逆に嚥下機能は急激に衰えていきます。口を使わなくなることで、唾液の分泌量がおち、口腔乾燥がおきます。口腔乾燥がすすむと、口腔粘膜が傷つきやすくなり、痂皮や剥離した粘膜の死骸が餅状になり、細菌感染の温床になります。また、唾液の分泌が減ることで、気道の乾燥が進み痰が出ますが、ねんちょうで絡みやすくなっていきます。口から食べ物を食べなくとも、このような自己由来の分泌物に細菌が繁殖し、それを誤嚥することで肺炎を起こしていきます。

結局、胃ろうだろうが、そうでなかろうが誤嚥を完全に防ぐことはできません。胃ろうはあくまで、対症療法で嚥下機能を高めるものではありません。繰り返す肺炎は、患者様には身体的な負担をかけますし、医療費でも1回肺炎を起こし55日入院をすると170万円が必要との報告もあります。実は、嚥下機能を高め、誤嚥による肺炎を減らすために、歯科的な口腔ケアが有効だとされています。口腔ケアは、一般的には、口腔内の汚れを取ることにより、肺炎を起こさせにくくできると思われていますが、東北大学の呼吸器科の調査では、口腔ケアをすることで、嚥下機能の低下を抑えたり、機能回復を起こすことが分かっています。(調査内容に関しては、「口腔ケアとは何か?」を参照してください。)

胃ろうの方の、口腔ケアの基本(必ず、歯科医師の診査、指導のうえで行ってください。患者様の口腔内の状態や嚥下機能、認知機能の程度などで手法が違います。)

①口腔内に保湿剤を塗り、数分間放置、痂皮や剥離した粘膜の死骸が餅状になったものをふやかしていきます。②かならず吸引器を用意して、吸引器つきのブラシ(吸引クルリーナブラシなど)で痂皮や剥離した粘膜の死骸が餅状になったものを後方から前方に向けて掻きだしていきます。③次に、吸引機能つきの歯ブラシで歯の汚れを取ります。④歯と歯の間は、歯間ブラシを使い清掃します。

基本的には、このような流れが一般的ですが、①ケア時に、頭部前屈30度くらいで、ケア時の誤嚥を起こしにくくする。②術者が、口腔内をよく観察できるように照明を手配する。③かならず、吸引器を使用する。④ケアのむずかしい患者様の場合は、二人で行う。などの注意も必要ですし、いきなりケアを行うとそれが原因で肺炎を起こしてしまう事例も報告されていますので、無理なケアの進め方をしないことも大切です。口腔ケアを行う前には、かならず歯科医師に口腔ケアアセスメントを作成してもらい、口腔ケアの進め方のアドバイスを受けてください。

このようなケアを、続けていくと、お口の中が徐々に清潔になるのが分かるようになります。おそらく発熱の頻度も減るはずです。これは、口腔内が清潔になっただけのためではなく、ケアをすることで、口腔内が刺激され嚥下機能の低下が抑えられているとの研究結果があります。きちんとやれば、それなりに結果が出るはずですが、口腔ケアはそれを行う方への啓蒙がいまひとつ進んでいないことや、本気でやるとかなり病院や施設に負担がかかる割には、診療、介護報酬でほとんど評価がないことなどで、なかなか当たり前に行われるケアになっていません。やはり、制度的にきちんと評価をしてもらわないと、口腔ケアにとり組む施設も多くなりませんし、結果、誤嚥による発熱や、誤嚥性肺炎の患者様も減らないのでしょう。厚労省の官僚の方の取り組みに期待したいと思います。