八王子にある歯医者さん 原田歯科医院

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300円の仮歯

長い付き合いのある技工士のWさんがNHKの取材を受けました。歯科技工は、経営状況が非常に厳しく、技工士学校を卒業しても、5年後にはその7割が技工士自体をやめてしまうほどの状況です。そういった現状を、取り上げるコーナーの取材だとのことです。いままで、歯科は、「命にかかわらない」という理由で蔑視的な診療報酬の決め方をされてきました。命にかかわろうが、そうでなかろうがひとつの処置をするのに2000円かかるものを、300円としか評価されなければ仕事として成り立ちません。歯科はそのような状態に常に置かれてきました。

以前は、自由診療などで埋め合わせをしていましたが、最近は歯科医師の過剰問題などもあり、歯科医院自体も経営を維持できるだけの自由診療の患者さんの数を確保できないため、廃院する歯科医院が後を立ちません。すでに、23区では、今年すでに7月の時点で400件程度歯科医院が廃院しました。そうなると、ほぼ採算割れに近い保険診療で何とかするしかないのですが、収入が増えない歯科医院の行えることは、人件費を減らすか、歯科技工の外注費を減らすぐらいしかできません。

人件費を減らすためには、歯科衛生士を雇用せず、時給が低い歯科助手をパートタイムで雇うことが一般的です。歯科衛生士を正社員で雇用すると、疲弊した歯科医院にとっては、非常に高額な社会保険料を負担しなければならないため、経営がとても苦しくなります。しかし、専門的な歯科サービスを提供するためには、本来は専門的な資格を持った衛生士は絶対必要ですし、歯科医師だけでは、治療はできても、歯周治療や、口腔衛生指導、患者さんとの専門的なやり取りに充分な時間をとることができません。ましてや、自分で受付などをしていると、かならず医療サービスの質が落ちます。でも、本当に患者さんのいない歯科医院では、歯科衛生士さん一人も雇えません。

また、歯科技工の外注費を下げることはすでに限界です。これ以上安い単価で外注させることは、歯科医師側からさえも危険を感じますし、結果的に無二のパートナーである技工士さん失職させるか、殺してしまいます。現在の歯科は、自分の体を切って、それを食べているような状態になっています。

元をただせば、自民党時代に政治家が歯科医療に対するビジョンをほとんど持たず、歯科医療行政を官僚にまかせっきりにしてきたことや、それに対して結果として、自民党にに政治献金だけして、ただぼんやりと他人事のように眺めていた歯科医師会の甘さによるものなのでしょう。それはさておき、人件費や、技工の外注費を減らしていくことで患者さんに利益になることはひとつもありません。歯科医院が何とかやっていけるというだけのことです。

なぜ、日本は行政が問題が大きくならないと何もしないか。そもそも、政治家が法整備の不備をタイムリーに修正したり、どんどん法律を作ったり、将来をみすえた動きを日本の進むべき道を先取りするなど、与野党の枠を越えて政治家本来の仕事をきちんとやっていたら、「いつも後手、後手で世界に置いてきぼりの日本」にはならなかったようにも思えます。

歯科技工の問題は、本当にそろそろ本気で対応しないと歯科自体がおかしくなってしまいます。また興味本位の報道にしないでほしいと、NHKのディレクターに訴えた技工士のWさんの熱意にNHKはどうこたえるのでしょうか。ほんとうのことを国民の皆さんに伝えてほしいと思います。そうしないときっと変わらない。