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摂食嚥下の評価について(VEを使わない簡便なもの)

本来、口から食べることは生命の維持に必要なことですが、加齢や脳血管障害など様々な疾患、外傷などによりその機能が一部もしくは全部失われてしまうことがあります。
それらは、機能訓練で回復するものもありますし、そうでないものもあります。
やみくもに回復を前提に訓練をすることは、危険ですし、患者様、ご家族に負担をかけるだけで終わってしまうこともあります。

まず今現在患者様が摂食嚥下機能がどの程度落ちているか評価することが初めのステップになります。
実際、VE(嚥下内視鏡)による観察によると、実際の患者様の摂食嚥下機能と栄養摂取機能のミスマッチは認められたものは、1/3程度認められたとの報告もあります。
本来は、経口摂取が可能なケースで経管栄養にされていたケースや、逆に経管栄養が必要なケースで通常の経口摂取が行われていたようなケースです。
前者は、食べる楽しみを奪われたうえ、経管にすることで逆に本来問題のなかった摂食嚥下機能を低下させてしまい、寝たきりになってしまう可能性がありますし、後者は、窒息や誤嚥性肺炎を起こして死に至ることがあります。

脳血管障害などで、片麻痺がおこった場合、必ずしもものをかむこと(三叉神経支配)、のみこむこと(舌咽、迷走神経支配)の機能回復が無理ということはありません。なぜなら、それらの支配神経は両側性のものであり、不全片麻痺などの場合は、訓練によってある程度機能回復の可能性が残されています。
そのためにまず患者様がどの程度の機能があるか評価を行わなければ、適正な食形態、摂取方法、訓練法などをデザインすることができません。

今回は、その評価について紹介していきたいと思います。

事前に把握しておくべき情報

全身的な問題

①体重、身長、年齢
②日常生活(自立、部分介助、全介助)
③意思疎通は可能か(難聴、視力障害なども確認)
④運動障害(麻痺、しびれはあるか、歩行可能、車いす、寝たきり?)
⑤脱水、栄養不良
⑥循環器や、呼吸器の疾患の有無
⑦熱発、肺炎の既往
⑧体重減少
⑨認知障害
⑩口腔内の診査
⑪現在かかっている疾患名
⑫服用している薬
⑬ADL、IADLランク
現状と、これまでの経緯は必ず把握しておきます。

食事について

①自立度(自立、部分介助、全介助)
②摂取法(経口、経管、胃婁、それらのコンビネーション)
③食形態(ふつう、きざみ、全粥きざみ、全粥ミキサー、ミキサー)
④食事時間(30分以内、以上)
⑤食事時間、回数
⑥食事の場所、姿勢、食器などの工夫
⑦むせの有無

口腔内の状態

①清掃状態
②舌苔
③口腔乾燥
④齲蝕、歯周炎
⑤その他軟組織疾患など
⑥義歯の使用の有無、使用状態の確認
⑦うがいができるか?
⑧口唇閉鎖ができるか?
⑨発音の状態(良好、不調、不明)
⑩流涎はないか
⑪舌の可動性、肥大などの診査
⑫咽頭反射はあるか?
⑬たんや痂皮の有無
⑭開口量、開口のしにくさ、ケア時の開口がきちんとできるか
⑮ケア時の協力度
⑯食事の際の下顎運動の評価
⑰会話時の鼻咽頭閉鎖機能の評価

患者様の観察から得られる評価

①食事の際、覚醒しているか?
中枢性疾患の有無がないか?
意思の疎通が取れるか?(こちらの指示が理解できるか?)
原因となるような薬剤の服用はないか?
栄養状態が悪く、脱水などにより覚醒できていない、もしくは無気力になっていないか?
覚醒していないために、嚥下反射の低下が起こっていないか?
②むせや嗄声がないか?
嚥下性無呼吸(嚥下時は、気道がふさがらないと誤嚥が起こりやすく危険)ができないと誤嚥のリスクが高まります。
これができていないと、むせたり、嗄声、咳が出てきたりします。これらは、健常者でも起こることです。
③異常に痩せていないか?
栄養不良(アルブミン値の確認)
筋力の低下による機能障害(たべたり、のみこむのに必要な筋力がない)
咽頭空隙の拡大により口腔内の陰圧をかけにくくなるため、口から咽頭への食塊の送り出しの圧の低下
④猫背
筋力低下による喉頭の位置の低下(喉頭の位置が下がると嚥下するのにより強い筋力が必要となります)
咽頭空隙の拡大(前述のとおり)
⑤首の硬さ
嚥下時良肢位の可否(食べる時の姿勢が悪いと首に力が入り、のみこみにくくなります。)
呼吸器障害の有無
⑥発音が問題なくできるか?
声門閉鎖の状態不良がないか?
口唇、舌、軟口蓋、咽頭などの機能障害がないか?
⑦流涎や痰の存在
嚥下機能の低下、誤嚥の有無がないか?唾液の分泌に見合う嚥下機能がない、もしくは、口唇の閉鎖機能が低くなっていることが多いです。咬合力が落ちると、口唇の閉鎖機能が落ちやすいとされています。
⑧口の中が異常に汚くないか?
口の中が汚いと、感染のリスク、口腔内の感覚が鈍化し、味覚低下、口腔咽頭機能の低下、意識の不明瞭が起こりやすくなります。また、口腔内が感染源となり、肺炎の発症、口腔内細菌出すプロテアーゼによるインフルエンザウイルスなどの感染を活性化します。
実際、それらが死因となることもあります。

摂食嚥下機能のスクリーニング法

RSST(反復唾液嚥下テスト)
30秒に何回唾液が嚥下できるかテストします。3回以下は、異常とされます。

MWST(改定水飲みテスト)
重度の嚥下障害がある患者様にも可能です。冷水3mlを口腔底におき、嚥下してもらいます。評価基準が4点以上なら最大2回繰り返します。
低いほうを評価点数とします。聴診するとより正確に診断できます。

評価基準
1点 嚥下なし、むせる、呼吸切迫のいずれか
2点 嚥下あり、呼吸切迫(Silent Aspiration、不顕性誤嚥)疑い
3点 嚥下あり、むせる、湿性嗄声
4点 嚥下あり、呼吸良好、むせない
5点 4点に加え、追加嚥下が30秒以内に2回可能

FT(食物テスト)
MWSTとやり方はにています。茶さじ1杯のプリン、または粥を用います。冷水を違い、固形物ですので、口腔底においたり舌に乗せたりして舌の食塊の送り出しの変化なども観察できます。

評価基準もほぼ同じですが、3点、4点のところが口腔内に残留があるか(3点は大部分、4点は若干)どうかが判定基準に加わっています。

これらの検査は、簡便ではありますが、患者様に大きな負担をかけず実際の嚥下機能の評価と高い関連性が認められています。

CT(咳テスト)
1%濃度のクエン酸生理食塩水をネブライザーで吸入してもらい、30秒以内に咳が出るかどうかを調べます。これは、気道に刺激が加えられたときにそれを咳により防御できる反射が残っているか調べます。主に、MWSTで見過ごされ気味な不顕性誤嚥のスクリーニングに用いられています。

その他、いろいろなスクリーニング法がありますが、原田歯科ではRSST,MWST,FT,CTを1セットで毎回行うことにしています。
これらのテストは、比較的患者様への負担が少ないうえ、感度、特異度も比較的高いため、有用な検査です。