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治療紹介

原田歯科医院

スペシャルニーズ歯科(障がい者歯科)・歯科訪問診療

ゆりかごから墓場まで、安心してかかれる歯科医療を提供します

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ドルミカムのみによる意識下静脈内鎮静法

歯の治療というと「痛い」、「怖い」というイメージがありますが、「痛い」に関しては局所麻酔を適切に行えばコントロールすることができます。しかし、「怖い」ということに関してはいままで、患者様の性格だったり、資質の問題だとして「痛み」に比べ私たち歯科医の取り組みが充分ではなかったように思えます。

痛みがなければ、恐怖心も和らぐということも確かだと思いますが、やはり痛みがなくとも怖い気持ちを一生懸命にがまんしている患者様は少なくありません。

歯科では、いままでも「怖い」にたいしてさまざまな鎮静法が行われてきました。鎮静剤を服用することによる経口鎮静法(厳密には調節性がないため、鎮静法とは言いません。)、笑気ガスを吸入することによる吸入鎮静法(IS)、静脈に鎮静剤を注射することによる静脈内鎮静法(IV‐S)が代表的なものです。ただ、患者様の恐怖心に対する歯科医の意識が低かったり、鎮静に対する知識や技術不足、歯科の鎮静に対しての診療報酬の評価が異様に低いなどの理由もあり、当院のように静脈内鎮静法をルーチンの保険診療でとりいれている個人の歯科開業医はとても少ないように思います。

よくインターネット上で散見されるのは、インプラントの手術などで麻酔医に依頼して静脈内鎮静法を行うケースや静脈内鎮静法自体をを自由診療で行うケース(このやり方は歯科治療自体もすべて自由診療になってしまうため治療費がかなり高額になります。)があります。
単発の治療であれば、良い気がしますが、口腔崩壊が進み何十回の通院が必要な患者様には経済的に無理な気がします。

保険診療で静脈内鎮静法を行うと、手技料、薬剤、酸素吸入などすべて含めてその1/10程度です。そのような治療費の設定は、一人の歯科医が鎮静を行い、治療も行う意識下静脈内鎮静法を前提にしています。日本歯科麻酔学会の「歯科診療における静脈内鎮静法ガイドライン」においても、意識下静脈内鎮静法では、鎮静を行う術者とは別に、患者様の状態を監視するアシスタント(当院では歯科衛生士)を配置すべきとの記載があります。当院でも、ガイドラインに沿って、鎮静と治療は私(原田)が行い、低酸素症に備え酸素吸入を持続的に行い、歯科衛生士が専属でモニターで呼吸や循環の状態を監視し続けるというスタイルで行っていました。
基本的に意識下鎮静は安全性の高いものだと思いますが、万が一舌根沈下などが強く出たときの対処や、最低限BLS(一次救命処置)ができないと困ります。また、それ以上深い鎮静に関しては、ドルミカムのみの鎮静では無理です。
また異常絞扼反射の場合は、プロポフォールが第一選択です。

歯科治療はとても人に対してストレスをあたえます。痛みや恐怖によるストレス、気道である口腔内を治療されることによる誤嚥、むせなどのリスク、歯科の局所麻酔薬に含まれるエピネフリン(血管収縮剤)の作用、長時間開口を強いられるストレスなどろくなことがありません。これを、循環器の疾患を持つ高齢者に行うとなるとなおさらです。いままで、これらの患者様に平気で侵襲の大きい歯科治療をしてきて、何もなかったことは幸運だと思う感覚を該当するすべての歯科医はそろそろ持つべきではないかと思います。

話がそれてしまいましたが、今回は、ミタゾラム(商品名ドルミカム)のみによる意識下静脈内鎮静法に関して取り上げてみます。

ドルミカムのみによる意識下静脈内鎮静法は、点滴でドルミカムのみを使用します。鎮静の深さは、患者様の意識を消失させない程度で、治療に対する恐怖心が取り除かれ、開口など治療に対する協力が得られる程度を目標としています。それ以上鎮静を深くしてしまうと、患者様は入眠してしまい開口はもちろん、口腔内に水をためたりすることができなくなってしまうため、むせたり開口器を使うようになります。さらに、深く鎮静したりすると、筋弛緩効果により舌根沈下が起こりるため、気道確保のためたびたび治療が中断してしまうことがあります。

ドルミカムは、プロポフォールと違い効果の天井効果があり、投与量が増えれれば増えるほど深い鎮静が得られることはなく、作用時間が長くなってしまいます。調節性があまりよくありません。投与量が多いと、拮抗剤のアネキセートを使用しても、半減期がアネキセートほうがドルミカムより短いため再鎮静が起こってしまいます。
ドルミカムのみによる意識下静脈内鎮静法は、鎮静の深さや時間の調節性が悪いため、当院ではほとんど行っていません。またドルミカムは感情の抑制が取れやすく暴れたりする方がいますのであまり個人的には静脈内鎮静薬としては好きな薬ではありません。
どちらかというと、強い健忘効果があるため導入時のみ使用しています。

意識下で鎮静するために必要なドルミカムの使用量はおおよそ0.05mg-0.075mg/kg(50kgの方で、2.5-3.75mg程度)ですので、基本的にその範囲での投与になります。初回投与で20-30分至適鎮静度を保てますので、それ以降は初回投与量の1/3-1/2程度の量を追加していきます。この方法は、2時間が限度です。

禁忌すべきケースは、

①妊娠3ヶ月以内(催奇形性の報告あり)、授乳中(母乳への移行あり)

②重症筋無力症、HIVプロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤投与中の患者、急性狭隅角緑内障の患者様とされています。

ドルミカムで起こる可能性のある呼吸抑制に関しては、刺激を与えることによる覚醒、頭部を横に向かせたり、セミファーラー位(ややイスを起こして、頸部を進展させると気道が開きやすくなる)、頭部後屈、あご先挙上法による気道確保、NPA(鼻咽頭エアウェイ)挿入、補助呼吸、酸素投与などを行いますが、それで不十分な場合は拮抗剤であるフルマゼニル(商品名アネキセート)を静注して覚醒させます。ミタゾラムは急速投与により、呼吸抑制が起こりやすくなるので、その点は充分注意して行います。また、鎮静時は口腔内に水をためる能力が落ちていますので、複数の吸引を使用するなど、吸引の技術が要求されます。

また、逆にベンゾジアゼピン系の薬を常用していたりする方だとドルミカムはあまり効きません。この場合は、プロポフォールを使います。ミタゾラムに鎮静作用はありますが、鎮痛作用はありませんので、局所麻酔は必ず必要になります。

ドルミカムは分布半減期6-15分、排泄半減期は1.5-5時間、代謝された物質に弱い鎮静作用はありますが、覚醒は抗不安薬としては速やかに起こるほうです。それでも平衡機能の回復は2時間程度かかります。また、アネキセートで覚醒すると半減期が短い(50分)ため、多量のドルミカム使用後だと再鎮静が時間差で起こることがあります。帰宅の条件は、バイタルサインが正常、まっすぐ歩けるか、ロンベルグテスト(かかとをつけ閉眼して、30秒直立不動でたっていられるか)などで問題がなければOKとなります。

また、当日は

①鎮静時に嘔吐などが起こると、肺炎などを起こす危険があるため、最低4時間前から絶食、2時間前からはクリアな飲み物も絶飲をお願いしています。(胃が空の状態でいらしてください)
②絶対に、車(当然バイクや自転車も)を運転して来ないでください。当日は、運転を避けてください。
③当日は、点滴を採ったり、血圧計、心電計、パルスオキシメーター(爪で動脈中の酸素濃度を測る器械)などをつけたりしますので、ゆったりとした楽な服装でいらしてください。お化粧や指にマニキュアをしないでください。

などのことをお願いしています。

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